フィンテックで変わる財務

STOと併せて注目のステーブルコイン Fintech協会 落合氏、神田氏インタビューフィンテックの今(1/4 ページ)

» 2020年04月01日 07時10分 公開
[中尚子ITmedia]

 米Facebookが、デジタル通貨「Libra」の構想を発表したことで、既存通貨に連動(ペッグ)などして、価格安定を目指すステーブルコインに注目が集まっている。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は投機的な性質だけが注目を浴びがちだったが、ステーブルコインの普及で金融サービスは変わるのか。フィンテック協会理事の落合孝文氏と神田潤一氏に聞いた。(聞き手はフリーライターの中尚子)

――ステーブルコインはどういったものを指し、暗号資産とはどう違うのでしょうか。

落合孝文氏(以下、落合) 現在普及しているビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は価格が大きく変動するため、決済には向かないという問題がありました。そこで、決済でも利用しやすいように、価値が安定しているコインとして作られたのがステーブルコインです。

 このような例として、1枚コインを発行するたびに、利用者から1ドルを保管して価値を裏付ける、法定通貨にペッグするコインが考えられます。Facebookが発行を目指すLibraも、法定通貨や比較的リスクの低い金融資産を裏付けにしているのでステーブルコインの一種である、と一部では考えられています(19年6月の記事参照)。

(イメージ)

 日本の法律で見ると、法定通貨に紐(ひも)づけられている場合は、暗号資産の規制対象になりません。そのため、事前に法定通貨をチャージした上でステーブルコインを発行する場合は、電子マネーと同じ「前払式支払手段」や「資金移動業」という位置付けになる可能性があります。

 また、対価性がないのであれば、規制の対象外であるマイルのような企業ポイントと同じような法的な位置付けになる可能性もあります。スイスのようにステーブルコインのガイドラインを出している国もありますが、日本では法的にどう整理するか、まだ明確には決まっていません。

神田潤一氏(以下、神田) 完全に1つの法定通貨にペッグする場合と、Libraのように複数の通貨にペッグする場合、どちらもステーブルコインと呼べるのかなど、ペッグする通貨や資産によっては位置付けが異なる可能性があります。

 また、1つのステーブルコインを発行するのに、完全に1単位の法定通貨を預託するケースと、理論上1つの通貨にペッグするように介入などの形で価格を安定させるようなケース、7〜8割分の通貨を預託するようなケースもあり得ます。仮想通貨にペッグするものをステーブルコインに含むこともあります。つまり、暗号資産から法定通貨までの間は離散的ではなく連続的で、その間をいろいろな形で埋めるような存在のうち、比較的法定通貨に近いものがステーブルコインだと考えると分かりやすいかもしれません。

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