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AIと量子アニーリングでごみ収集ルート最適化 総走行距離2300kmを1000kmに短縮 三菱地所ら

» 2020年03月31日 15時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 ごみ収集ルートを機械学習と量子コンピュータ(量子アニーリング方式)を用いて最適化すると、従来の総走行距離を約57%削減できる──AIモデル構築などのクラウドサービスを提供するグルーヴノーツ(福岡市)と三菱地所は3月30日、こんな計算結果を発表した。

ごみ収集のルートを最適化

 三菱地所が東京・丸の内エリアで運営する26棟のビルから廃棄物を収集ルートを、グルーヴノーツのクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」(マゼランブロックス)を使って最適化した。

 マゼランブロックスは専門的な知識がなくても機械学習で予測モデルを作成できるクラウドサービス。カナダD-Wave Systemsの量子アニーリングマシン「D-Wave 2000Q」を利用して「組合せ最適化問題」を解くこともできる。

AIでごみ発生量を予測 量子アニーリングで収集ルートを最適化

 収集ルートの最適化では、まず各ビルに入っているテナントの種類や割合、過去3年間分のごみの種類別発生量などを可視化。可視化したデータに加え、気象データや地区のイベント情報などの予測因子を加味して、ごみの発生量を予測するAIモデルを構築した。

 AIが予測した数カ月後の結果に基づき、確実にごみを回収しながら車両台数が最も少なく、かつ移動距離が最短となるルートの組み合わせを、量子アニーリングを用いてシミュレーションした。

 その結果、実際のごみ発生量に対し、AIは約94%の精度で予測できたという。AIの予測結果から量子アニーリングを用いて収集ルートの最適化シミュレーションを行ったところ、現状では2296.2kmだった総走行距離(1日分)を1004.2kmに短縮できるという計算結果が出た。収集車の台数も75台から31台と少なく済ませられるという。

現状のデータと、AIと量子アニーリングによる最適化シミュレーションの比較

 走行距離や収集車の台数を減らせていることから、「SDGs・脱炭素化への寄与が期待できる」(2社)としている。

 しかし、三菱地所は「実導入には、各ビルごとの廃棄物収集業者との契約・連携などにハードルがある」として、最適化結果の本番運用は現時点で想定していないという。

 同社は、今後もグルーヴノーツとともに、都市機能の高度化などを目指す「City as a Service」に向けて検証や開発を続けていくとしている。

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