感染拡大に伴い、日本経済にも深刻な影響を与えつつある新型コロナウイルス。安倍首相が会見で「リーマンショックの際を上回る規模の緊急経済対策の策定」を表明するなど、予断が許されない。「コロナショック」は、果たしてリーマンショック以上の悪影響を日本経済に今後、もたらすのだろうか。
そこで、WHO(世界保健機関)からコロナウイルスの世界的感染(パンデミック)の中心地と名指しされ、拡大がアジア圏より進む欧州の中でも、経済規模や特徴が比較的日本に近いとされるドイツ経済の「先行例」を元に迫りたい。
先日、ドイツで注目される経済データが公表された。3月の「Ifo景況感指数」がそれである。この指数はドイツの有力なシンクタンクが企業の景気に対するマインドを調査したもので、世界景気の良しあしを占う上でも頻繁に利用される。
3月のIfo景況感指数は86.1と2月の96.0から急低下し、ドイツ企業の景気に対するマインドが急速に冷え込んでいることが確認できた。コロナショックがドイツ経済に与えた悪影響の強さがうかがえるが、ではコロナショックとリーマンショック(2008年9月)とを比べると、どちらの方がより深刻な悪影響をドイツに与えているのだろうか。
リーマンショックは、08年9月に当時の米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻に伴って生じた、世界的な金融危機だった。しかしそれ以前から、Ifo景況感指数の動きが示すように、世界景気は徐々に後退局面に入っていた。景気が徐々に悪化してきたところに金融危機が生じ、景気が一気に底割れしたのである。
一方で、今回のコロナショックは、景気が持ち直しの兆しを見せていたところで生じた。それも金融、つまりカネの危機ではなく、コロナウイルスの感染拡大によってヒトとモノが動かなくなる、つまり景気が急激にマヒするというかたちで、経済が危機に陥った。それに引きずられるかたちで、カネも危機に瀕(ひん)することになった。
ヒトとモノの方が先に動かなくなり、さらにそれがいつ動き出すかが全く見えない。こうした厄介な状況が、フリーフォールのような急速な低下を記録した3月のIfo景況感指数の動きに表れている。カネの動きをどうにかすればよかったリーマンショックの方が、今回のコロナショックよりもある意味では対応しやすかったといえよう。
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