新品の電車はどうやって運ばれる? 線路をどこまでもつなぐ、2つの理由杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)

» 2020年04月03日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 3月26日深夜、新潟県のえちごトキめき鉄道「妙高はねうまライン」で珍しい列車が走った。しなの鉄道向けに新規製造された電車を運ぶ「甲種輸送」だ。線路がつながっていれば、他の鉄道会社の線路を経由して電車を運べる。鉄道ネットワークの効果を示す好事例だ。

深夜、機関車と新造車両を連結させて運ぶ「甲種輸送」を実施。新井駅にて約20分の停車中

普段は貨物列車が走らない路線

 この日、新潟市秋葉区の鉄道車両メーカー「総合車両製作所」で落成した電車「しなの鉄道SR1系」は、JR貨物のディーゼル機関車で引き出され、隣接する新津駅を経由して新潟貨物ターミナルまで運ばれた。ここからはJR貨物の電気機関車にバトンタッチして、信越本線を通って直江津駅に到着。ここから、同じ機関車がそのままけん引して、えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインを走り、妙高高原駅でしなの鉄道に入った。

 妙高高原駅はしなの鉄道との境界だ。しかし、ここで納品とはしない。いきなり自走させる前に、車両基地で検査などの作業が必要だ。そこで、機関車に引かれたまま屋代駅まで運ばれて輸送完了となった。

機関車と新型車両の連結部分。汚れないようにシートを被せている。機関車と電車は連結器の形が違うため、電車側は機関車に合わせて輸送用の連結器を装着。納品後、正規の連結器に交換された

 この甲種輸送業務に先駆けて、えちごトキめき鉄道から「3月10日の訓練運転も取材しませんか」とお誘いをいただいた。機関車に添乗させていただいたけれども、撮影は禁止だったので残念ながら映像はない。趣味的にも貴重な体験で、特に電気機関車の起動時の音は、まるでモビルスーツの起動音のよう。メカ好きにはたまらない。が、本論ではないので省略する。

 訓練運転では、JR貨物の機関士が運転し、えちごトキめき鉄道の運転士が付く。両者とも声を出し、地上設備、信号機、速度制限標識などを指さし確認していった。踏切の手前、見通しの悪いところでは警笛も必要だ。

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