現金給付一律“断念”の裏で……日銀「最大12兆円株購入」がもたらす2つの大問題古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)

» 2020年04月03日 07時34分 公開
[古田拓也ITmedia]

 新型コロナウィルスの感染拡大により、世界各国で「現金給付」に乗り出す例が増加している。米国やカナダなどでは1人当たりおよそ10万円程度の現金給付が実施されるなど、大型の財政出動を行うことで、直接国民を支援することがアナウンスされている。

 一方で日本ではいわゆる「お肉券」や「お魚券」が話題になった。これはあくまで政府全体のスタンスではなく、自民党の農林部会や水産部会が検討していた内容ではあるが、国民感情を逆なでする内容だっただけに大きな批判を浴びることとなった。3月30日には、政府の緊急経済対策における提言の中で、現金の一律給付を断念し、一定の要件を設ける旨が記載されるなど、他国との対策の差が浮き彫りとなった。

 反面、スピーディな対応といえば日本銀行の追加緩和だ。日銀は3月16日に予定よりも2日ほど前倒しで金融政策決定会合を実施し、ETF(上場投資信託)の年間買い入れ額を12兆円と、従来の6兆円から2倍規模にまで拡大することを決定した。

 日本銀行が、今年に買い入れたETFと日経平均株価指数を比較すると規模感が分かる。これまでは1回あたり700〜1000億円を買い入れていた日銀は、追加緩和を機に、1回あたり2000億円規模の買い入れを断続的に行っていることが分かる。

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 日銀は、今年だけですでに2兆5000億円以上のETFを市場から買い付けている。仮にこれが国民に現金給付されたとすれば、1人当たり2万円以上はもらえるレベルの規模感だ(なお、この部分はあくまで規模感の例えという趣旨であり、「政府は2万円を給付できるはずなのに株につぎ込んでいる」という話ではない)。

 日銀による巨額のETF買い付けは、さまざまな点で歪(ゆが)みを生じさせ得る。今回は中央銀行による株式の購入がもたらす歪みを2点確認していきたい。

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