3月6日、角川ドワンゴ学園が運営する通信制高校「N高等学校」(N高)は「N高投資部」の2019年7月〜20年2月における投資成果の報告会を開催した。「N高投資部」の特別顧問には、現在はシンガポールに住みながら、投資家として活動を続ける村上世彰氏が就任している。
報告会では村上氏から生徒に対して活動期間のなかで感じた株式投資への感想や、お金に対する考え方の変化について質問する場面があり、生徒たちからの回答に村上氏が深くうなずく場面が何度も見られた。村上氏といえば、「モノ言う株主(アクティビスト)」としても知られており、最近ではレオパレスや東芝機械に関しても度々報道されている。
前回の記事「村上世彰に森永卓郎の息子が聞く「日本の経営者に必要なこと」――株主がガバナンスを利かせ」)に続き、経済アナリスト・森永卓郎氏の長男で、自身も金融教育ベンチャー・マネネでCEOを務める経済アナリストの森永康平氏が、アクティビストの最近の動向についてインタビューした。
――2月は新型コロナウィルスの影響もあって、N高投資部の生徒たちにとっては成果を上げにくい環境だったとは思いますが、彼らにとっては一生の思い出になったでしょうし、非常に大きな財産になったでしょうね。
そうでしょうね。株式投資を通して、企業や社会とは何なのかということについて、深く学ぶことができただろうと思います。
――村上さんが生徒たちに投資部の活動について感想を聞いていましたが、多くの生徒が投資に対して「恐怖心を抱かなかった」と言っていましたね。それを受けて、村上さんは少し残念そうな様子でしたが、いかがですか?
最初は、彼らも投資を恐がっていましたよ。でも、投資活動を続けていくなかで「損しても大丈夫」って思い始めちゃったのかもしれないね。それは生徒たちがどうという話よりも、制度設計の問題だと思っています。
――確かに、報告会の中でも自分たちの投資が失敗したことについては反省の材料になってよかったと思う一方で、「村上さんのお金を減らしてしまって申し訳なく思った」という意見もありました。やはり他人のお金で投資しているという考えがあるのですね。
森永さんのお父さんがラジオで今回の投資部の企画について、「他人の金で投資なんてさせたら、全員が新興株で博打(ばくち)をやる」ってコメントなさっていたけど、そんな生徒1人もいませんでしたよ。高校生にその発想はないと思う。そんな生徒がいたら、むしろうれしいですよ(笑)。
――投資部は第2期もやるという話でしたが、次回は制度設計に変更を加える予定でしょうか?
まだ、そこは分かりません。ただ、第2期をやるということは、今回の生徒たちは(第2期の生徒にとっては)先輩になる訳です。そういう意味では、しっかりと先輩たちが後輩たちに自身の経験を基にアドバイスをして、コミュニケーションが生まれるような仕組みは作っていきたいと思っています。
――報告会のなかで生徒たちの活動報告を聞いていましたが、実際に企業に訪問してIRの担当者に話を聞きに行ったりしていて感心しました。なかには株主総会に参加したという生徒も何人かいましたね。
最終的に勝っては欲しかったけど、今回の活動は、単に儲(もう)けてほしいという目的ではありません。投資を通じて、企業や社会の実態を見てもらうことが一番です。
――村上さんが特別顧問ということもあって、レオパレスの株主総会に足を運んだという生徒も何人かいましたね。
2月に株主総会を開催する企業は少ないですから、その関係もあったでしょう。
――やはり実際に経営者の話を直接聞くのは重要ですよね。村上さんも投資していたときは現地へ調査しに行っていましたか?
私自身は最近は何もしていませんが、うち(レノ、オフィスサポートなど村上氏が関わる会社)のメンバーはもちろんやっています。私だって投資をしていたときは直接取材に行っていましたよ。ただ、私の場合は、ファンドの代表として行くわけですし、IR担当じゃなくて、社長自ら出てくることが多かったので、その点は生徒たちとは少し違う環境ですね。
――村上さんはどうやっていい経営者を見抜くんですか?
私はいい経営者がいる企業には投資をしませんよ。そういう企業は既に株価が高くなっていますから。もちろん、例えばオリックスの宮内義彦さんは立派な経営者でしたが、それと(自分が実際に)投資をするかどうかは別物です。私が投資したいと思うのは、しっかりと売り上げも利益も出ているのに、資本を効率的に活用していない企業です。そういう経営者は大抵、投資家とも株主とも対話をしません。
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