会社が、「手放したくない」と思う人が、持つフォロワーシップとはビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

一緒懸命に頑張っているほうだ。指示にも従い、人事考課もよい。でも、あまり報われていない気がする。出世も早くないし、何が足りないのだろうか……。

» 2020年03月26日 07時19分 公開
[伊庭正康ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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『トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトに移動します)

 今、私は、年間200回程度の企業研修に登壇しています。すると、受講者から、こんな声を聞きます。自分は、一緒懸命に頑張っているほうだ。指示にも従い、人事考課もよい。でも、あまり報われていない気がする。出世も早くないし、何が足りないのでしょうか……。

 先に答えを言いましょう。答えは「フォロワーシップ」にあります。

 フォロワーシップとは、上司自身にスキルの不足や見えていない盲点があるなら、参謀のようにサポートする姿勢のこと。中堅が、上司の言うことを聞き、マジメに頑張ればいいといったマインドでは物足りない、というわけです。上司が中堅以上の部下に求めるのは、従順さではなく、組織や周囲への影響力なのです。

 でも、ここに気付いていない人が多いのが現実で、そんな背景もあり、このフォロワーシップをトレーニングする研修に企業が注目しているのです。私の研修会社にも、多くの相談が寄せられます。

 今回は、拙著『トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている』で紹介しているフォロワーシップのポイントを整理しました。スマートに自分らしさを貫き、それでいて会社にとってなくてはならない存在になる、そんな人材になるための一助になればうれしいです。

今、フォロワーシップの高い人材にチャンスは集っている

 フォロワーシップとは、メンバーが、上司をサポートする姿勢を言います。

 フォロワーシップの重要性に注目が集まったのは、カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が、著書『The Power of Followership(1992年)』で初めてこの概念を「フォロワーシップ」という言葉で表現したのが始まりです。組織の成功の8割は部下のフォロワーシップによって決まる、とまでロバート・ケリー教授は言います。

 私の本でも紹介したのですが、最近では、こんな事例があります。みずほ銀行で、34歳(9年目)の支店長が誕生したことがニュースになりました。背景には、ゼロ金利、フィンテック、もはや既存のルールが崩壊する中、新たな勝ち筋を見いださないと生き残れない。年齢や社歴なんて言っている場合ではないのです。実際、みずほFG社長・グループCEO(最高経営責任者)の佐藤康博氏も、中期経営計画の発表の場で「年功序列を崩す」といった旨の発言をしています。

 もちろん、抜てき人事は、みずほ銀行だけではありません。部長職は40代が当たり前の日本マクドナルドでも、28歳の執行役員が誕生しています。抜てきされた人は、インタビューでも、このように答えています。「(新卒で入社し、その頃より)毎日、毎日、呪文のように、“会社を変えたい”“会社を変えたい”って唱えながら仕事をしていた記憶がある」

 さて、いかがでしょう。抜てきされた人材の共通点は、既存のルールを変える、そんなエネルギーを持つ人材なのです。

フォロワーシップを高める、2つのチカラ

 でも、自分は「そんな高い意識を持てていないかも」と思ったかもしれません。安心してください。最初から持てている人は3%しかいません。ここでは、私が多くの大手企業で実践し、効果の知見を得られている「フォロワーシップの高め方」を紹介していきます。

 ベースとなるのは、ロバート・ケリー教授の理論。まずは、次の図をご覧ください。2つの軸で構成される、5つの「フォロワーシップ」の類型に分かれています。

2つの軸で構成される、5つの「フォロワーシップ」の類型

 つまり、この2つのチカラを高めればフォロワーシップを高めることができるのです。

 まず、縦軸のチカラは、「上司に提言をする力」です。

 これは、職場の問題や、事業やサービスの問題があれば、臆することなく上司に問題提起を行い、その上で対策の提案をするチカラを言います。

 逆にこの軸が低いと、上司の言うことは絶対であり、多少の違和感があったとしても、取りあえず従うといった状況を指します。

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