動画配信ビジネスが成長している。映像ビジネスのマーケティング会社GEM Partners(東京・港)の調査によれば、2019年の国内市場規模は2158億円、前年比22.4%の成長だ。既にビデオソフト(DVD/Blu-ray)販売を大きく上回る。
中でも注目を集めるのが、Netflixの躍進だ。19年に日本国内の契約者数が300万人を突破したニュースは記憶に新しい。前述の調査結果によるとNetflixの日本でのシェアは13.8%と前年の8.4%から急伸し、市場1位に躍り出た。
大手通信会社auとのパックサービスの導入や、『全裸監督』などのオリジナルドラマ・アニメの人気が契約増を牽引(けんいん)した。Netflixはシェアだけでなく、オリジナル番組制作とその予算の高さで、番組の作り手としても日本の映像業界に対する影響力を拡大している。魅力的なオリジナルタイトルの数々は、“向かうところ敵無し”を感じさせる。
ところが最近は、Netflixの先を危ぶむ声があがり始めている。同社のビジネスが必ずしも万全でない、という指摘もある。2019年から20年にかけて、動画配信ビジネスへの大手企業の新規参入が急増し、競争が激化しているためだ。
中でも強力なライバルは、米国のエンターテインメントのビッグプレイヤーたちだ。これまで動画配信サービスに番組を提供してきたハリウッドメジャーが、それを取りやめて自身の映像プラットフォームに番組を集中させるようになってきた。Netflixなどの動画配信事業者は、長編アニメーションやスーパーヒーロー映画、SF・ファンタジーの大作、人気テレビドラマを大量に失うことになる。安閑としてはいられない。
とりわけ2019年11月に「Disney+」で定額課金(サブスクリプション)サービスに北米などで参戦したウォルト・ディズニーは強力だ。「ディズニー」「ピクサー」「マーベル」「スター・ウォーズ」「20世紀FOX」の人気ブランドを取りそろえる。その後も世界各国にネットワークを広げ、日本市場参入も視野にしているのは間違いない。
20年にはワーナー・メディアの「HBO max」、NBCユニバーサルの「Peacock」も同様のサブスクリプションサービスを開始予定だ。IT企業系サービスではAmazonプライム・ビデオ、Apple社の「Apple TV+」もある。ビジネスモデルの違いはあるがグーグル系のYouTubeの他、広告付無料配信で急成長する「Tubi」や「Vudu」も存在感を増している。ちなみにTubiは、この3月にテレビ放送事業のFoxによる550億円での買収が決まったばかりだ。ビジネスモデルの多様化も相まって、世界の映像配信サービスは戦国時代を迎えている。
ユーザーは当然こんなにも多くのサービスと契約はしないし、そもそも視聴時間は有限だ。今後数年は熾烈(しれつ)な生き残り競争が繰り広げられ、いくつかのサービスは姿を消すことになるだろう。
それでは一体、どのサービスが生き残るのか。現在は覇者のように見えるNetflixはどうか、逆にハリウッド勢は巻き返しを図れるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング