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新型コロナで増える「パワハラ」 “悲劇の温床”を放置する経営トップの責任河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)

» 2020年03月27日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 またもや、悲くて、痛ましい事件が起きていたことが分かりました。

 ヤマハの30代の男性社員が、50代の男性上司から厳しい指導などのパワーハラスメントを受けて体調を崩し、1月に自ら命を絶っていたというのです。パワハラは2019年末に社内の通報窓口への情報で発覚。同社が第三者の弁護士に調査を依頼したところ、男性社員の体調悪化と上司のパワハラに因果関係が認定されたそうです。

 また、熊本県上益城消防組合消防本部の40代の男性係長が19年5月、「上司からパワハラを受けた」というメモを残し自殺。第三者委員会が調査したところ、「仕事を丸投げされ質問すると『自分で調べろ』などと怒鳴られる」「外部業者の前で叱責(しっせき)を受ける」などのパワハラを日常的に受けていたことが分かりました。

 上司によるパワハラ、パワハラによる過労自殺……、19年12月にはパワハラをした三菱電機の男性会社員(30代)が「自殺教唆の容疑」で書類送検されましたが、どんなに上司が罪を問われようとも、どんなに上司のパワハラが認定されようとも、亡くなった人は決して戻ってきません。

 いったいなぜ、パワハラはなくならないのか。いったいなぜ、周りは止めることができないのか。

 これだけパワハラが社会問題化し、パワハラをなくそうという意識はかつてないほど高まっているのに、悲劇が繰り返されています。

新型コロナ問題によって、パワハラ増加の懸念が広がっている(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そして、今。新型コロナ問題により、「パワハラとか増えるのでは?」という懸念があちこちから聞こえるようになってしまいました。

 経営悪化によるリストラや雇い止め、非正規社員と正社員との待遇格差・賃金格差。差別、罵倒、嫉妬、貪欲、猜疑、憎悪など、あらゆるネガティブな感情が吹き出し、職場環境が悪化するのではないか。そんな懸念が生じているのです。

 「それってさ、ちょっと飛躍しすぎなんじゃない?」

 そう思う人もいるかもしれません。

 しかしながら、私たちは自分が思う以上に環境の影響を受けます。人の働き方は環境が決めるといっても過言ではありません。それは言い換えれば、自分がパワハラの加害者になる可能性もあるってこと。環境次第で、「私」が加害者にも被害者にもなる可能性がある。

 そこで今回は「パワハラを生む環境」をテーマにあれこれ考えてみようと思います。

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