クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタが始めるブロックチェーンって何だ?池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2020年03月23日 07時02分 公開
[池田直渡ITmedia]

 3月16日、トヨタ自動車は、ブロックチェーン技術の活用検討の取り組みを発表した。同社は、4月からグループを横断する「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を立ち上げ、あらゆるモノ、サービスを、「安全・安心」かつ「オープン」につなぐ新しいサービスに取り組んでいくという。

ブロックチェーンとは?

 という話なのだが、そもそもブロックチェーンとは何なのかから説明を始めなくてはいけないだろう。ブロックチェーンというと、いきおい仮想通貨の話になりがちだが、それは今回あまり関係ないし、そもそも仮想通貨は巨大なブロックチェーンの可能性の一部分でしかないので、スルーして話を進める。

 ブロックチェーンとは、つまるところデータをオープンに共用する技術である。例えばトヨタとデンソーで部品を管理するための台帳のフォーマットが異なれば、デンソーからトヨタに納品されたときにトヨタのフォーマットで台帳に記入するデータを作り直さなければならない。

 デンソーだけならいいが、アイシンやジェイテクトなどのトヨタグループ内の複数のサプライヤー、そしてそれ以外のサプライヤーからも部品は納入される。それぞれに異なるデータを毎度翻訳して加工するのは面倒だし生産性が落ちる。そこで、みんなが使える汎用の台帳を作ってしまえというのがブロックチェーンの基本の「き」だ。仕様が統一されれば、デンソーやアイシンやジェイテクトが作ってくれたデータをトヨタはそのまま利用できる。

 台帳だから、例えば仮にデンソーが納品したインジェクターの生産日や検査日、検査責任者が書かれていたとしよう。そのデータはトヨタがそのまま引き継ぎ、そのインジェクターが組み立てラインで組み付けられ、検査されという流れをシームレスに書き込むことができる。つまりこうなるとデンソーの台帳もトヨタの台帳もない。デンソーのさらに前の素材メーカーも同じ台帳を利用すれば階層はさらに増える。モノに紐(ひも)づいた汎用台帳だ。

 だから後で必要ならいくらでも辿(たど)って戻ることができる。要するに何らかの不具合が発生した時の、原因究明に必要なトレーサビリティ実現の機能も備えていることになる。こうした汎用台帳による記録履歴の連続的な保存が可能になれば、業務プロセスの大幅な改善が可能になるわけである。

 しかしながらオープンな台帳となると、アクセスする組織の数も多く、どこかに不届き者がいて、不正に改ざんするリスクがある。だから従来は台帳をいじれる人数を制限し、クローズドな環境でデータを守る必要があった。コピーならいざ知らず、オリジナルは当然門外不出である。ブロックチェーンは、そこに暗号化の技術によって、改ざんとコピーを防止するシステムが盛り込まれたところが新しい。

 要するに、台帳データに過ぎないといえばそうなのだが、改ざんを防ぐ技術を盛り込んだことによって、より多くの人が台帳にアクセスしても大丈夫になった。オープンな環境で使えるのだ。

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