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東京都の新型コロナ対策サイト“爆速開発”の舞台裏 オープンソース化に踏み切った特別広報チームの正体(1/4 ページ)

» 2020年03月18日 07時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 東京都が公開した「新型コロナウイルス感染症対策サイト」が、都としては異例のオープンソースなWebサイトとして話題になっている。このサイトは、元ヤフー社長の宮坂学副知事率いる「特別広報チーム」が、発足からたった1週間で公開した“爆速開発サイト”だった。

photo 爆速開発された新型コロナウイルス感染症対策サイト

 新型コロナウイルス感染症対策サイトでは、都内の新型コロナウイルス感染者数やコールセンターへの相談件数などをグラフや表として掲載し、視覚的に分かりやすくまとめている。

 異例なのは、サイトのソースコードをGitHubで公開している点だ。一般の人々でもサイトの構造を確認できるうえ、コードの改善提案(プルリクエスト)を出したり、他の自治体がコードをコピーしてそれぞれの対策サイトを作ったりできる。これまでは、東京都のサイトやサービスでソースコードが公開されることはなかった。

 8日ごろには、台湾のデジタル担当政務委員(デジタル大臣)であるオードリー・タン氏がサイトに改善提案を出していると話題になった。9日を過ぎると、神奈川県や北海道で都のソースコードを流用して作られた対策サイトが立ち上がるなど、取り組みが急速に広がっている。

 東京都はなぜ即座にこのようなサイトを作れたのか。開発を取り仕切った東京都の特別広報チームに経緯を聞いた。

photo 「特別広報チーム」のある東京都庁へ

2月26日、宮坂副知事主導でプロジェクトの立ち上げ

 東京都は2月26日、新型コロナウイルス感染症に関する情報発信を担う特設の特別広報チームを立ち上げた。チームリーダーは元ヤフー社長の宮坂学副知事だ。

 特別広報チームではまず、どのように情報発信するべきかアイデアを出し合った。

 「新型コロナウイルス感染症という今までないような状況で、正確な情報を都民に迅速に届けることが最重要課題」――そう語るのは、特別広報チームの井内雅妃デジタル広報担当課長(政策企画局政策調整部)だ。

 新型コロナウイルスの感染者数は日々変化していくため、サイトも常に改善を続けられるようにする必要があった。

 そこで宮坂副知事が提案したのがオープンソースなサイトの構築だった。副知事は「(情報発信は)東京都だけの問題じゃない」とし、正しく新鮮な情報を伝えるだけでなく、他の自治体でも同じ仕組み使えるようなサイトを作りたいと考え、GitHubでソースコードを公開することにしたという。

 特別広報チームの天神正伸情報通信技術課長(戦略情報推進本部ICT推進部)は宮坂副知事のスピード感について、「全体を俯瞰(ふかん)して見ているので決断が早かった」と話す。

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