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孫正義氏、「新型コロナの簡易PCR検査を100万人に無償提供」とツイート 「医療崩壊させる気か」リプライで批判噴出【追記あり】

» 2020年03月11日 20時50分 公開
[井上輝一ITmedia]

 ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)が3月11日に、「新型コロナウイルスに不安のある方々に、簡易PCR検査の機会を無償で提供したい。まずは100万人分。申込方法等、これから準備」と、新型コロナウイルス感染症に対する具体的な方針をTwitterに投稿した。一方、医療関係者とみられるTwitterアカウントなどからは批判の声が上がっている。

孫社長が発案した簡易PCR検査の流れ

 日本国内での新型コロナウイルスのPCR検査人数は、3月11日正午時点で9195人。100万人が検査を受けられれば、国内の新たな感染ルートが見つかる可能性はある。海外でも、米国は「検査キットが足りない」(マイク・ペンス副大統領)として120万人分の検査キットを今週末までに配布する方針を示している。

過剰な診断による医療崩壊の危険も

 しかし、簡易的な検査を大多数の人々に対して行うと、かえって医療崩壊などを招く危険もある。どんなに精密な検査でも100%完璧に診断できるものはなく、必ず「偽陽性」(実際は健康なのに感染しているとする判定)や「偽陰性」(実際は感染しているのに健康とする判定)が生まれるからだ。

【訂正履歴:2020年3月11日午後9時30分 当初、陽性者数から有症者数を引いた数字を「偽陽性の疑い」と紹介していましたが、厚生労働省のデータを改めて確認したところ、陽性者数のうち有症者数以外は「無症状病原体保有者」の数で、偽陽性の数とするのは誤りでした。おわびして訂正いたします】

 検査の方法により、偽陽性や偽陰性は一定の割合で発生する。このため、検査数を増やせば偽陽性の判定数は比例して増えることになる。一方で、陽性の患者数は同じく比例して増えるかというと、実態としてそれだけの感染者がいなければ、そうはならない。簡易的な検査キットを用いれば、偽陽性の割合はさらに増えると予想される。

 陽性判定を受ける患者の視点からみても問題はある。重大な病気について、症状がない場合や軽い症状で陽性の判定を受ければ、患者心理としては不安になる。そのような患者に対して医療でどのようなケアができるかどうかというのは論点の一つだ。今回の問題以前にも、例えば東日本大震災における福島県の子どもの甲状腺がん検査について、X線の被曝を伴う検査であることからも自覚症状のない人に行うべきではないとする議論がある。

孫社長のツイートに対するTwitterユーザーの反応(出典:Yahoo!リアルタイム検索)

 孫社長が午後6時25分に当該ツイートを投稿してから午後8時までの時点で、約3400件のリプライがTwitterユーザーから寄せられている。その多くは批判的な投稿で、医療関係者とみられるアカウントからは「検査機関への過剰な負担になる」「受け皿となる病床が乏しい状況での検査乱発は控えてほしい」「無症状の陽性患者や偽陽性の方が医療現場にあふれかえり、医療崩壊を招く可能性がある」など、検査の乱発を控えてほしいという声が上がっている。

 一方、孫社長はその後のツイートで、軽症者に対しオンライン診療を行う政府の方針に賛同の意を示しており、医療崩壊を引き起こさないよう行う考えを示している。

追記:2020年3月11日午後9時 孫社長「やめようかなぁ……」

 孫社長は午後8時34分、「検査したくても検査してもらえない人が多数いると聞いて発案したけど、評判悪いから、やめようかなぁ。。。」と、当初の発案ツイートに対し批判的なリプライが相次いだことから、簡易検査キットの配布について中止も含めて検討する考えを示した。

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