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正社員に戻るのが怖い――非正規42歳女性のトラウマが暴く「ロスジェネ再挑戦」の盲点ロスジェネ女子の就職サバイバル(1/4 ページ)

» 2020年02月28日 08時00分 公開
[菅野久美子ITmedia]

 就職氷河期が直撃したロスジェネ世代(1970年〜82年生まれ)。就活が極めて狭き門で、企業や国からも「放置されてきた」世代だ。特にロスジェネ世代の女性は、男性に比べ結婚、出産といったライフステージの比重が高い上に、今ほど男女平等や働き方改革、セクハラ対策の恩恵も受けられていなかった。

 彼女たちに対し最近にわかに浮上した救済策は、内閣府の「就職氷河期世代支援プログラム」に代表される「正規雇用=正社員化の支援」だ。劣悪な非正規雇用の環境に悩まされた世代への順当な対策のようにも思える。

photo 正規雇用化支援が標ぼうされるロスジェネ救済策。しかしそこからは見えないこの世代の“傷”がある(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

新卒時の配属、会社に「裏切られる」

 ただ、ロスジェネ女子の悩みを深く探って見えてくるのは、「氷河期世代の救済」がそのように単純なものではない、という問題だ。ロスジェネ女子連載第4回は、過去の仕事のトラウマから「正社員に戻るのは恐怖」と、非正規雇用から抜け出せなくなった女性の半生を追う。

 「私自身、いまだに自分に自信が持てないところがあるんです。氷河期世代で、ブラック企業でパワハラを受けたり、リストラだったり、過酷な環境で働いている間に挫折を経験したのが影響しているのかもしれません」

 佐藤美緒さん(仮名・42歳)は、そう言ってうなだれた。現在、都内の企業で事務職の派遣社員として働く美緒さんは、非正規雇用で先が見えないという不安を抱えている。

 美緒さんは関東の高校を卒業後、私立大の文系学部に進学。就職戦線が厳しいことはひしひしと感じていて、大学3年夏から就活を始めた。しかし、就活は全滅に近く、内定が出たのは大学4年の9月だった。

 美緒さんは、本に関わる仕事がしたいという夢があった。そのため、1年以上就活に費やして、小規模ながら憧れだった出版社の内定を勝ち取り、喜び勇んだ。しかしもそれもつかの間、配属先を聞いて血の気が引いた。美緒さんは、内定をもらった9月からその出版社の編集部にバイトとして働いていた。しかし、正式に配属になったのは出版社が経営するショップの売り子という、全く希望と違う業種だったからである。

 「正式採用の数日前になって突然、会社で経営しているショップの店員になれと言われたのです。内定ももらっているし、『今更話が違います』とも言えなかった。これからのキャリアにも差し支えるし、正式採用される前に逃げ出すのも根性がないと思われると思って、仕方なくその会社で働くことにしたんです」

 しかし、そこでも困難が待ち受けた。配属先では上司の執拗なパワハラが待っていたのだ。新卒である美緒さんは、まさに都合の良いサンドバックにされた。

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