フィンテックで変わる財務

スマホ決済の勝者はこのまま「QRコード決済」になるのか? 一筋縄ではいかないこれだけの理由2020年がターニングポイントに?(1/4 ページ)

» 2020年02月28日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 国家レベルのプロジェクトとして進行しながらも、「現金好き」な国民性が邪魔をして遅々として進まぬわが国のキャッシュレス化。昨秋の消費税引き上げと同時にスタートした国家予算によるポイント還元事業により、ようやく前進をはじめたように感じる今日この頃です。それにつれ、現時点でキャッシュレス決済の主流を形成している感の強いQRコード決済業者間にも、大きな動きが出てきました。国際交流が活性化するオリンピックイヤーの2020年は、わが国のキャッシュレス化が大きなターニングポイントを迎えそうな雲行きです。キャッシュレスビジネスを巡る現状の整理と今後の展望を探ってみます。

2020年がキャッシュレスのターニングポイントとなるか(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

現状キャッシュレス「主役」のQR決済に大きな動き

 消費増税から間もない11月半ばに、業界を揺るがす大きな動きがありました。QRコード決済でPayPay陣営を先導するソフトバンク・グループのヤフー(Zホールディングス)と、同じくLINE Pay陣営のLINEが統合するというニュースです。業界トップグループを形成するPayPayとLINEの統合は強者連合結成を印象付け、乱立状況下での“勝ち名乗り”とも受け止められそうな、大きな動きでした。

 しかし落ち着いて考えると、LINEは本業である対話アプリ関連事業こそ好調であるものの、QRコード決済の競争が激化してきた18年来、システム開発コストおよびキャンペーンコストに追われるQRコード決済部門が大きく足を引っ張って、18年12月期が約37億円、19年12月期は468億円の赤字を計上しています。ヤフーによるLINEの実質救済統合とまでは言わないとしても、LINEとしてはQRコード決済事業開始当初の予想をはるかに上回る、自社の体力を超えた事業投資規模になってしまったのは明らかです。当該事業の売却等切り離しも視野に事業再編を検討する中で、「ヤフーとならばお互いの強みを生かし、次なる展開が描ける」と判断して軍門に下った、というのがこの統合の真相であるように思えます。

2期連続赤字のLINEはヤフーの軍門に下った?

 そもそもQRコード決済事業は決済取り扱いそのものには大きな収益性は期待できず、当面各陣営は多くの利用者を抱え込むことで、その先にある顧客の購買データをマーケティングデータとして活用するビジネスで大きな利益を狙う、というのが実情です。しかし、まだキャッシュレス支払利用率が低い国内においては、収集データが大きなビジネスにつながるような環境が整っていません。それがいつになるのか分からぬまま、「とにかく1人でも多くの利用者を取り込んで、来るべきビジネス化に備える」、そんな状況が続いているのです。

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