新たな「和食」に名乗り ビーフンは“関ケ原”と太平洋を越えられるか顕著な西高東低人気(1/2 ページ)

» 2020年02月26日 05時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 すし、うどん、天ぷら――。世界中に「和食」として知られるこうした面々に新たに名を連ねようとする食べ物がある。それが、「ビーフン」だ。ビーフンの製造販売を手掛けるケンミン食品は2020年で創業70周年を迎え、ビーフンを国内だけでなく、世界へ発信する体制を着々と整えている。

 そもそも、ビーフンとは何か。漢字で「米粉」と書く通り、原材料を米とする麺のことを指す。さらに、05年に設立したビーフン協会では「米の原材料比を50%以上」のものをビーフンと定義している。発祥は中国とされ、戦後まで日本ではなじみがなかった。戦争が終わり引き揚げてきた人たちからの「食べたい」という声に応え、同社の創業者である高村健民氏が国内での製造を始めたことが、日本でビーフンが広まった1つのきっかけだという。以来、ビーフンの国内市場は年間1億食ほどまで成長。同社の主力商品である「ケンミン焼ビーフンシリーズ」の売り上げは、ここ数年で年間1500万食ほどにも伸びている。

ビーフン市場は年間1億食ほど

 しかし、19年に社長へ就任した高村祐輝氏は、まだまだビーフンに“伸びしろ”があると考えている。その1つの理由が、ビーフン人気の「西高東低」だ。同社は、自社販売額の全国平均を「100」とし、地域別家庭用商品支出額との比較を行いビーフンの「地域別個人消費指数」を算出。すると、九州〜近畿までは軒並み「100%」を上回ったのにもかかわらず、関東では95%。北陸では65%、東北62%、甲信越では29%と、西高東低な結果が明らかに。高村社長は、「(国内に競合企業が少ないことから)ビーフン市場でわれわれはオンリーワン。われわれが動かないと、市場が大きくなっていかない」と話す。

ビーフン人気は顕著な「西高東低」

 ビーフン人気が“関ケ原”を越えるために必要なものは何なのか。同社の担当者は「食べていただくのが最大のポイント」と話す。同社のビーフンは、原材料が米100%。小麦から製造するラーメンなどと異なり、「グルテンフリー」の食品だ。そのため、小麦アレルギーの人も安心して食べられる。また、食べた際の血糖値の上昇が緩やかである食品「低GI食品」でもある。昨今の健康ブームもあり、お客との接点さえ作れれば、人気は拡大していくはずと考えている。

 実際、同社はお客との接点を増やす施策を旺盛に行っている。東京支店の設備増強、人員拡充を行うほか、16年には東京・六本木に「健民ダイニング」オープン。ランチタイムには女性を中心に賑わいを見せているという。また、商品パッケージにQRコードを印刷。Web上にある、ビーフンに関するレシピへ誘導する施策も行っている。レシピは担当の社員が1日1案ずつ考案しているという力の入れ具合だ。このように、ビーフンになじみの薄い関東圏において、日常的にビーフンを食してもらうことで「市民権」を得ようとしている。

スープで食べる汁ビーフン
夏場には冷やしビーフンも
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