大手出版社の集英社が、2017年6月から居酒屋ビジネスを手掛けている。19年5月末まで同社の週刊誌『週刊プレイボーイ』にちなんだ「週プレ酒場」が新宿・歌舞伎町に開店し、19年7月からは『週刊少年ジャンプ』とコラボした「おとなのジャンプ酒場」(以下、ジャンプ酒場)が同所にオープンしている。
「ジャンプ酒場」は1年間限定という期限付きで展開される予定で、既に半年が過ぎ、折り返したところだ。その様子はどうなのだろうか。1月7日、「ジャンプ酒場」であるイベントが開かれた。その名も「『キン肉マン酒場』オープンイベント」。19年に「キン肉マン」の連載開始から40周年を迎えたことを記念してのイベントで、会場には50人ほどのファンが集まった。
トークイベントでは原作者のゆでたまごの1人、嶋田隆司さんが登壇。冒頭で「『キン肉マン』は去年40周年をやったんですけど、僕がデビューしたのは5月だったので、今年も5月まで『キン肉マン』40周年は続きます。楽しみにしていてください」とあいさつすると、会場は活気に包まれた。
その後は、「キン肉マン」40周年にまつわる取り組みがどんなものであったのか、ファンに披露された。最初に取り上げられたのが、18年12月にここで開かれた「キン肉マン酒場」(第1弾)。来場者にこの第1弾も訪れたかどうかを問うと、大勢の手が上がった。
今回の「キン肉マン酒場」は40年間にわたる連載を支えた読者に対する感謝の場として作られた。店内には19年11月に開催された帝国ホテルでの関係者向けの「感謝の会」の装飾物・展示物が再現され、新たにコラボメニューも加えられている。また店内には連載1回目から最終回まで、掲載された全ての『ジャンプ』がそろえられていて、手に取ることが可能だ。コラボ期間は1月7日から2月29日までで、好評であったため当初より20日間延長した。好調を支えた集英社のバーティカル(特化型)戦略に迫る。
19年1月から2月にかけては、首都圏のJR駅で「キン肉マンスタンプラリー」が展開され、この様子が紹介された。このスタンプラリーは嶋田さん自らも参加し、全駅制覇したことが明かされた。
目玉は19年11月に東京都千代田区の帝国ホテルで開かれた「キン肉マン40周年感謝の会」だ。出版やアニメなど業界関係者400人を集めたイベントで、40周年を記念して関係者への感謝の気持ちを示すための会として催された。しかしながら、ファンへの感謝の気持ちを表明する場が設けられていなかったため、今回のオープンイベントが企画されたという。
この日のジャンプ酒場の様子を見渡すと、「ジャンプ酒場」ののれんは外され、「キン肉マン酒場」へと変わっていた。文字通り店内が“キン肉マン一色”になった格好だ。提供されるコラボメニューも当然、「キン肉マン」オンリーだ。
だが、「ジャンプ酒場」のオープン当初は、『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』や『北斗の拳』『ろくでなし BLUES』など1980年代のジャンプ作品を中心とした横断的なコラボメニューなどが供されていた。どれか1つの作品だけに特化することはせず、作品のファンというよりもあくまで『ジャンプ』ファンを念頭に置いた展開がなされていたのだ。
この“方針転換”はなぜなのか、そこにはバーティカル(特化型)戦略が飲食業界にも求められている現状がある。「ジャンプ酒場」の運営を統括する、集英社コンテンツ事業部の東秀人さんは、7月にオープンしてからの客足の動きをこう振り返る。
「7月と8月は、これ以上回すことができないぐらいにお客さんが連日来てくださいました。これが9月ぐらいから落ち着いてきまして、10月は8月の約半減、普通の居酒屋ぐらいの客足に落ち着いていた感じです。そんな流れに転機が訪れたのは、11月から本格的に始めた『シティーハンター』とのコラボでした」
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