積み立てだけでなく取り崩しも自動化 楽天証券が始めた投信定期売却機能の狙い(1/2 ページ)

» 2020年02月17日 07時30分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 資産の構築のために定期的にお金を投資に回す、いわゆる積み立て投資の考え方は、かなり一般に普及してきた。一方で、形成した資産をどう使うかの話はまだほとんど聞かない。老後資産2000万円問題といわれるように、積み立てて形成した資産は、老後になったときに今度は取り崩して使っていくことになる。

 こうした問題を解決する機能の提供が始まった。楽天証券が2019年12月29日から開始した、「投信定期売却サービス」だ。持っている投資信託を、自動的に毎月一定の方法で取り崩して現金にしてくれる。まさに積み立ての逆の機能だ。

資産形成のための積み立ては普及してきているが、人生全体で考えた場合、資産を活用(取り崩し)して老後を過ごすための、取り崩しの理論が重要になる(楽天証券資料より)

預かり資産を「減らす」機能 狙いの一つはシニア層訴求

 「年金制度が改定されて、15年の幅で受け取れるようになる。75歳からなら1.8倍もらえる。ならば75歳までの間、どうお金を受け取るのかが大事になっていく。働き方、もらい方、使い方。この3つをどう組み合わせるかが大事になる」

 定期売却サービス開始の背景を、楽天証券アセットビジネス事業部長の長谷川卓弥氏はこう話す。貯めることが資産形成の目的ではなく、貯めたお金は、目標やゴールを実現するための手段だ。そのためには、資産を取り崩して現金にしていく必要があるが、「いくらずつ取り崩したらいいの、どのくらい取り崩すのは難しい」(長谷川氏)。

楽天証券アセットビジネス事業部長の長谷川卓弥氏

 これをシステム化し、自動的に取り崩せるようにしたのが定期売却サービスというわけだ。

 もちろん、顧客から資産を預かって運用の手伝いをするのが証券会社のビジネスだ。定期売却機能などを提供しては、預り資産残高が減るじゃないか、という懸念もある。長谷川氏は、「事業性の議論がなかったわけじゃないが、こうしたサービスをきっかけにユーザーが動き出してくれれば、周りまわってメリットがある」と話す。

 狙いの一つは、老後に入り資産の取り崩しニーズを持つシニア層の取り込みだ。楽天のポイント経済圏との相乗効果で、現在楽天証券のユーザーは急速に増えている。しかしその多くが、ネットリテラシーの高い若年層だ。

 「楽天証券のお客様は、圧倒的に若い方がどんどん増えている。銀行や対面証券は20〜30代の顧客に訴求できていないと思うが、われわれは逆だ。期待しているのは、当社と取引が現在ない人たち。日本の金融構造はかなりの金額が預貯金に固定化されている。このサービスをきっかけに、お金が(株式などの)直接金融にシフトすれば日本が元気になる。そのお金を使うようになれば、消費にも貢献する」

取り崩し期に入っても、運用を継続することが大切だ。定期売却サービスでは、受取額のシミュレーションを提供している。画像は、運用利率を3%と仮定して、投信の1%を毎月受け取るように設定した場合のもの。運用の継続によって、受け取れる額や期間がたいへん大きくなることが分かる
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