ソニーの次世代ゲーム機「プレイステーション 5」(PS5)の仕様を考察(妄想?)していく本企画。後編となる今回は、SSD(ストレージ)、サウンド機能、コントローラ、光ディスク周りの仕様を、現在判明している情報から最新の技術視点で推察していく。
PS5のウリとしては、「超高速アクセスが可能なカスタムSSD搭載」という点がよく話題になる。PS5のアーキテクトであるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)のマーク・サーニー氏や、SIE社長兼CEOのジム・ライアン氏もかなり強くアピールしている。
特にサーニー氏は「PS5に搭載されるSSDのアクセス速度は、現時点のどのPCよりも高速である」と述べているのが興味深い。
これは恐らく、PS5のAPUが2019年夏にAMDプラットフォームから始動したばかりの新世代PCI-Express(以下、PCIe)であるPCIe Gen.4(PCIe 4.0)の4レーン接続に対応することを示唆しているのだろう。PCIe 4.0はSSDの理論的なデータ伝送速度は片方向転送で32GB/s(※8GB/s×4レーン)にもなる。ちなみに、ZEN2世代CPUやNAVI世代GPUは共にPCIe 4.0に対応済みである。
ただ、大容量SSDを搭載するのはコスト的に無理があるので、おそらくキャッシュ用途で使うものと思われる。というのも、PS5におけるSSD採用の説明でサーニー氏は、興味深いひと言を付け加えているからだ。それは「未フォーマット状態での読み込み速度を重視してSSDを活用するのだ」という発言である。
これはつまり、PS5はSSDの全体あるいは一部を、ゲームデータ保存用のファイルシステムとは異なる用途に利用することを意味すると推察できる。すなわち、事実上「SSDをキャッシュ用途で利用する」と解釈できるわけだ。ということは、メインの容量重視のストレージは従来通りハードディスク(HDD)が使われるのだろう。
さて、気になるSSDの容量だが、コスト的な理由でそれほど大きくないと考えられる。「よくプレイする数タイトルのデータをキャッシュできればよい」と考えるとその容量は大きくても128〜256GBといったところだろうか。
PS5では、サウンドシステムも進化することが予告されている。
「3Dオーディオ処理専用ユニット」というのは、どうやら「オブジェクトベースオーディオ」(※3Dポジショナルサウンド、とも)と呼ばれる技術に対応すると見て間違いないだろう。
オブジェクトベースオーディオとは、ユーザーを中心にした前後左右と上下360度の任意の座標に音像を定位させて、音を再生する技術のことだ。実はこれ、それほど新しい技術ではなく、既に「Dolby Atmos」や「DTS:X」といったオブジェクトベースオーディオに対応するフォーマットが実用化されていて、市場には数多くの対応製品が登場している。
オブジェクトベースオーディオの対義語となるのが、チャンネルベースオーディオである。これは、ユーザーを取り囲むように設置した複数のスピーカーで、特定のオーディオストリームを再生する従来型のサラウンドサウンドシステムのことだ。「5.1ch」とか「7.1ch」というキーワードは見たり聞いたりしたことがあると思うが、あれはまさにチャンネルベースオーディオのことである。
さて、今どきのゲームプログラムは、既にプレイヤーを中心に置いたオブジェクトベースオーディオ的な仕組みでサウンドを処理している。にもかかわらず、プレイステーション 4(PS4)では、出力の段階でチャンネルベースオーディオに適合するように、5.1chや7.1chへとミックスダウンして出力していたのだ。
それがPS5になると、3Dオーディオ処理専用ユニットなる専用サウンドプロセッサを用いて、ゲーム内部のオブジェクトベースオーディオのサウンドを、そのままDolby AtmosやDTS:Xとして出力できるようになるのだ。
サーニー氏が「PS5のサウンドはヘッドフォンで聴くのが最良」という発言をしているのも興味深い。これはおそらくソニーグループが推進しているソニーの独自技術「360 Reality Audio」への対応を示唆していると推測できる。
「360 Reality Audio」は、オブジェクトベースオーディオの再生を、2つの耳で聞くイヤフォン/ヘッドフォンベースで実現してしまう技術のことだ。
人間が2つの耳で360度の全天全周の音像定位を知覚できているのは、耳に入った音波が鼓膜を振動させる前に、耳殻(じかく、いわゆる耳)によって変調される音の特質を脳が聞き分けているためだ。
ただ、指紋と同様に耳殻の形状は個人ごとに異なる。そうなると、前後左右や上下といったあらゆる位置や向きで鳴った音を耳殻で変調する処理を、耳殻形状に合わせて最適化したリアルタイムシミュレーションとして行う必要がある。
それを実践してしまうのが360 Reality Audioなのだ。
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