このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
電気通信大学の研究チームが2019年11月に発表した「Hanger Drive」は、「ハンガー反射」を用い、バランススクーターに乗車したユーザーの運転方向を制御する手法だ。
ハンガー反射とは、針金ハンガーを頭にかぶると意図せず頭が回ってしまう現象を指す。腰に装着しても同じ現象が起きるため、今回の操作では腰用ハンガー反射装置を用いる。
腰用ハンガー反射装置は、エアポンプ、電磁弁、大気圧センサー、マイクロプロセッサ、アルミニウムフレームなどで構成する4つの空気圧バルーンが特徴のデバイスだ。
ユーザーにこの装置を装着させ、バランススクーターに乗車させる。空気を送りバルーンを膨らませ、圧力で皮膚の変形を引き起こし、それによりハンガー反射を誘発、ユーザーの回転を制御する。
ユーザーが乗車するバランススクーターは、実験段階では「Kintone」を使用。イベント「SIGGRAPH Asia」の展示では「Segway Drift w1」を使用した。各足の重心を反対方向に動かすと回転する仕組み。身体がねじれることで重心が変化し回転する。
この身体のねじれをハンガー反射の知覚回転力で制御して、運転をナビゲートする。タブレットインタフェースで遠隔制御が可能だ。
人を乗せたバランススクーターをラジコンのように操作できるのに加えて、AR技術でバーチャルマップを作成すれば、ゲーム感覚でARタウンも体験させられる。
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