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ネットで叩かれている「Slackマナー」は本当にアホらしいのか? 良しあしを真剣に考えてみた(1/2 ページ)

» 2020年01月09日 12時38分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「メッセージを送る際は宛名と所属を書かねばならない」「『お疲れさまです』などのあいさつは必須」「偉い人に@でメンションしてはいけない」――。ビジネスチャットツール「Slack」にこんなマナーが生まれていると、Twitterなどで話題になっている

 Slackマナーにはこの他、「重要なことは別途メールで送るべき」「画面の下部に『入力中……』を出さないよう、メモ帳などで推敲(すいこう)してから文章を貼り付けるべき」などが存在するという。

photo ビジネスチャットツール「Slack」

 これらのマナーは、あるTwitterユーザーが「同僚の営業マンが、業務改善セミナーで聞いてきた話」としてツイートし、「アホらしい」「Slackの有用性を壊している」などと物議を醸している。

 このツイートが真実か否かは不明だが、自身も業務でSlackを使っている筆者は、マナーの是非について考えてみた結果、「アホらしい面も確かにあるが、一理ある」という結論に至った。この記事では、その理由を説明していこう。

メールへの回帰に意味はない

 アホらしいとハッキリ思えたのは、「重要なことは別途メールで送るべき」「宛名と所属は必須」などと、メールの悪しき風習に回帰したようなマナーだ。

 筆者は、Slack提供元の米Slack Technologiesを取材する中で、幹部らによる「メールを活用したやりとりをSlackで効率化したい」「オープンな議論によってコミュニケーションを活性化したい」といった発言を何度も耳にしている。

 Slackが昨秋に開催したカンファレンスに、ユーザー企業の代表として登壇したメルカリの長谷川秀樹CIO(最高情報責任者)も、「約5年前から社内メールを使わず、全社の連絡手段をSlackに一本化している」「複数のプロジェクトをSlack上で進行している」などと活用法を説明した上で、「コミュニケーションの速さに驚いた」と効果を語っていた。

 Slackはそもそも、メールベースのやりとりから脱却し、意思疎通を効率化するために作られたツールだ。セミナー講師が考え出したという「重要なことは別途メールで送るべき」「宛名と所属は必須」といったマナーは、提供元の目的や理念に反しているので、従う必要は一切ないのではないか。

Slack運営元が勧める“公式マナー”が存在

 「偉い人に@でメンションしてはいけない」というマナーもアホらしい。重要な連絡を見落とさないように、せっかく運営側が用意した機能をあえて使わないのは、宝の持ち腐れでしかない。

 もし上司が「通知がうっとうしいから、Slackでメンションするな!」と部下に怒るようなタイプだとしたら、筆者は「ちょっと器が小さいんじゃないの?」「ITリテラシー低くないですか?」とツッコミを入れたくなる。

 ただ上司に限らず、あまりにメンションを乱発すると、受け手の集中力をそいでしまう可能性は否定できない。この点について、Slack提供元が公式に推奨しているマナーがあることをご存じだろうか。

 Slack Japanが2018年12月18日に公開した公式ブログには、「本当に必要なとき以外は、大勢に通知を送らないようにするのは大切なマナーだ」との記載がある。

photo Slack提供元が公式に推奨しているマナー

 Slackには、参加者全員にメンションできる「@everyone」、チャンネル参加者全員にメンションできる「@channel」、オンラインになっている人に通知を送れる「@here」といったアラート機能があるが、これらを多用し、メッセージを必要としない大勢のメンバーに通知を送ることは避けるべきだという。

 Slack提供元では、社員がこれらの機能を使って、多数のメンバーにメンションを送るケースは珍しいそうだ。同社は「アラートの送信はユーザーグループ内にとどめるべきだ」と説いている。

 Slack Japanはさらに、「過去のディスカッションの内容を検索しないまま、他のユーザーに質問をすること」「大勢が参加しているチャンネルで、トピックと無関係なメッセージを書き込むこと」などをマナー違反の例として紹介。いずれも、業務のスピードを落としたり、無駄な手間を生んだりすると指摘している。

 これらのマナーは、言われてみれば一理ある。そして、オフラインのコミュニケーションにも共通している。会議で無関係な発言をしたり、調べれば分かることを質問したりすると、周囲の気分を害しかねない。Slack利用の有無を問わず、職場でのこうした行動は避けるべきだろう。

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