要介護状態になる前にAIが検知 三重で実証実験へ

» 2020年01月16日 07時00分 公開
[ITmedia]

 合同会社ネコリコと日本データサイエンス研究所(以下、「JDSC」)、ならびに東京大学大学院情報学環 越塚登研究室は、3者共同で、AIと電力データを用いたフレイル検知に関する実証実験を2020年に三重県東員町において実施すると発表した。

 20年1月設立予定の「東大・三重連携 介護予防に向けたAI・データ活用研究会」と連携し、東京大学地域未来社会連携研究機構、東京大学高齢社会総合研究機構、三重大学、三重県、東員町が参画して、東員町における20年中の実施に向けて共同実験を進める。

 「フレイル」とは、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態を指す。適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があることから、フレイルの早期発見、早期対応が重要なものとなっている。近年は、厚生労働省も自治体におけるフレイル予防対策を推進している状況だ。

単身高齢世帯の増加にどう対応していくのか(写真提供:ゲッティイメージズ)

 NIRA総合研究開発機構によると、35年の介護給付額は22.4兆円にのぼり、16年の9.6兆円からその負担額は倍以上となっている。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、独居高齢者の割合が年々増加し、同年には高齢世帯の約4割が独居世帯になるとされている。

 早期のフレイル発見・対応のために自治体を始めとしたさまざまな努力がなされている一方、独居高齢者が拡大する中で、全ての高齢者に対してフレイル発見を漏れなく行うことは困難を伴う課題となっていた。

 そこで、3者は19年より、スマートメーターから取得可能な電力データや各種センサーデータとAIを活用し、家庭の見守り等に関する技術を研究開発してきた。

 スマートメーターとは、毎月の検針業務の自動化やHEMS(Home Energy Management System)を通じて、電気使用状況の見える化を可能にする電力量計。中部電力管内では22年度末までに全家庭への設置が完了予定となっている。

東京大学と三重県が連携して実証実験を実施

 特に単身高齢世帯に対しては、AIが電力データなどの各種データから、フレイルの簡易判定を行う技術検討も進めてきたという。本技術の共同実証を通じ、漏れのないフレイル早期発見を実現し、地域が抱える介護予防の課題解決を支援するべく、本技術の社会実装を目指して取り組んでいく。

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