米国防総省はなぜ「AWS」ではなく「Azure」を選んだのか 100億ドルのJEDI契約AWS、IBM、Oracle、Google、Microsoftが受注でしのぎ

米国防総省は、クラウドプロジェクト「JEDI」の契約先として、本命視されていたAWSではなく、Microsoftを選定した。その背景には何があったのか。

2019年11月26日 05時00分 公開
[Chris KanaracusTechTarget]
画像

 Microsoftは2019年10月、米国防総省(DoD)のクラウドプロジェクト「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)の契約を獲得した。Amazon Web Services(AWS)をのけて得たMicrosoftの受注は、クラウドベンダーの競争の分岐点として記憶される可能性がある。

 JEDIは「米国内から米国外へとシームレスに拡張でき、可用性が高く、安全で、回復力に優れたクラウド環境」の構築を目指し、1社のベンダーと10年間の契約を結ぶことを計画している。JEDIの契約は、Amazon Web Servicesが獲得するというのが大方の予想だった。JEDIの構想は2017年9月に初めて発表され、AWSやIBM、Oracle、Google、Microsoftが受注にしのぎを削った。国防総省は2019年4月に契約先候補をAWSとMicrosoftに絞り込んだ。このプロセスを不服として、Oracleは米連邦裁判所に訴訟を起こしたが、連邦裁判所は2019年7月にその訴えをのけた。

競争で優位に立つと見られていたAWS

 AWSは、JEDI契約の獲得競争で優位に立っていると見られていた。同社はクラウドサービスの幅広さと深さに加え、政府機関との契約実績もある。AWSは数年前、CIA(米中央情報局)との6億ドルの契約を獲得した。この契約は、CIAのビッグデータ分析能力の向上に主眼を置いたものだった。一方でMicrosoftも、2018年5月に米国の複数の情報機関と、政府機関向けクラウド「Azure Government」の利用に関する数億ドル相当の契約を締結したと発表している。

 JEDIの契約料は、全契約期間(10年)で最大100億ドル相当だ。ただし基本契約期間は2年間で、契約の保証金額は100万ドルにとどまると国防総省は明かす。この最初の2年間に支出される金額は約2億1000万ドルと見込まれる。契約の残りの部分については厳密な記録と評価が継続され、その結果に基づいて逐次決定される。

 AWSからすぐにコメントを得ることはできなかったが、報道によると同社の広報担当者は、JEDI契約の結果に驚いたという。「AWSは、クラウド市場の明確なリーダーだ。比較対象サービスを細部にわたって純粋に評価すれば、明らかに異なる結論になる」。AWSは、こう述べたと報じられている。

なぜAzureを選んだのか

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 株式会社MONO-X

IBM i の資産を生かし、着実に DX へとつなげるモダナイゼーションの進め方

IBM i 基幹システムを運用する企業でモダナイゼーションが喫緊の課題となる中、推進の課題も多い。そこで、「クラウド」「ノーコード開発」「API」「AI」を主軸とするIBM i ユーザー向けモダナイゼーションサービスを紹介する。

製品資料 富士通株式会社

小売業のDXを加速する次世代のプラットフォームとは

小売業界にとって、顧客体験(CX)、従業員体験(EX)の向上ならびにDX推進は重要度の高い課題である。多拠点、多店舗、他業態を展開する小売業でCXとEXをグローバルに向上する次世代のリテールコマースプラットフォームとは。

事例 株式会社BeeX

わずか4カ月でデータ分析基盤の内製化に成功、ロッテに学ぶDX推進の秘訣

ロッテはシステムのAWS移行を進める中、DX推進の鍵は内製化比率の向上にあると考え、内製化の強化に踏み切った。本資料では、内製化の実現に向け、支援を受けながら、初めて取り組んだAWS開発と人材育成を成功させた事例を紹介する。

製品資料 株式会社AIT

国際間の映像データ配信や拠点間での動画共有も高速で、ファイル転送の注目手法

大容量データの送受信には、通信遅延や帯域制限の課題がある。本資料では、高速で安全なデータ送信を実現できるファイル転送プラットフォームを紹介する。導入時に気になるポイントとともに、料金プランも分かりやすく解説している。

製品資料 発注ナビ株式会社

リードが商談化できない? SaaS導入のベンダー側と企業側の悩みを一掃する方法

SaaSの利用が拡大する中、ベンダー側と企業側の両方がさまざまな課題を抱えている。ベンダー側は商談につながるリードが獲得しにくいと感じており、企業側は製品の選定に困難さを感じているという。双方の課題を一掃する方法とは?

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...