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「クラウドは信頼できない」は本当か? AWS、Office 365、自治体IaaSの障害を経て、私たちが知っておくべきこと(1/3 ページ)

» 2019年12月27日 07時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]

 2019年は国内外で、大規模なクラウドサービスの障害が相次いで発生した。まず8月にAmazon Web Services(AWS)の東京リージョンで障害が発生し、モバイル決済やオンラインゲームなど多くのサービスが一時利用できない状況に陥った。このAWSの障害による影響状況を目の当たりにし、多くのビジネスがAWSのクラウドインフラに依存していることを思い知らされた。

 続いて11月には、米MicrosoftのOffice 365で障害が発生。日本やオーストラリアなどのユーザーはメールの受信が遅れ、復旧に半日ほどを要した。翌20日にも午前中から「Microsoft Teams」や「Skype」などの一部サービスにアクセスできなくなり、Twitter上に「仕事が進まない」と嘆く声が多く投稿された。

photo 2019年はAWSやOffice 365で障害が発生した

 さらに12月には、日本電子計算が運用する自治体専用IaaS「Jip-Base」で障害が発生。転出届や税務関連の処理など、多くの自治体のサービスが利用できなくなった。20日以上経過した現在では、多くの自治体のシステムは再稼働したものの、一部自治体のシステムではバックアップデータが失われており、復旧のめどは立っていない。

「クラウドサービスは信頼できない」は本当か?

 これらの“3大障害”の影響範囲が広く、復旧に時間がかかったこともあり、世間では大きな話題を呼んだ。そして、障害が起きるたびに、「クラウドサービスは信頼できないのでは」「オンプレミスの方が安全で、安定しているのでは」といった議論も巻き起こった。

 しかし筆者は、パブリッククラウドからオンプレミスに戻すのはナンセンスだと考えている。確かに、オンプレミスなら自分たちで自由にITインフラをコントロールできる。莫大なコストと手間をかければ、パブリッククラウドよりも高い可用性環境を用意できるかもしれない。だがその反面、オンプレミスでは全ての管理を自分たちで行わなければならない。

 24時間365日システムを監視し、何か問題が発生すればすぐに駆けつけて対処する必要もある。人手が不足する中で、そんな優秀なインフラエンジニアを企業が多く確保するのは容易ではないだろう。

 そのため企業は、パブリッククラウドサービスを「ダメだ」と切り捨て、オンプレミスに回帰するのではなく、メリットとデメリットを認識した上で、クラウドとうまく付き合っていくべきだろう。本記事ではその根拠を整理しつつ、運用における課題点の解決策を提示していきたい。

可用性はクラウドならではのメリット

 パブリッククラウドのメリットの1つに、サーバ・ストレージ・ネットワークなどのリソースだけでなく、電源や空調なども含むインフラ全体で十分な冗長化を施し、高い可用性を確保している点がある。その可用性の高さから、小さな障害が起きてもすぐに復旧し、ユーザーが障害に気付かない場合もある。

 多くのユーザーでインフラを共有しているため、十分に冗長化されたインフラを比較的安価に利用できるのも周知の通りだ。企業が自前のデータセンターでインフラの冗長化を行おうとすれば、かなりのコストを要するが、クラウドを活用するとこれを防げる。

 他にもパブリックラウドならば、インフラ管理の手間をサービスプロバイダーのプロフェッショナルなエンジニアに任せられる。また多くの場合、パブリッククラウドのインフラ管理は自動化されており、人為的なミスが入り込む余地も少ない。

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