この記事は榊巻亮氏のブログ「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」より転載、編集しています。
1人のビジネスマンとして声を大にして言いたいことがある。
日々の業務にしても、変革プロジェクトにしても、事業創造プロジェクトにしても、ビジネスの現場で絶対に避けて通れないのは「会議」であり、「打ち合わせ」である。
組織が組織として機能するためには、他人と認識を合わせ、1つの成果に向かって役割分担していく必要がある。これは、会議や打ち合わせを抜きにしては実現できない。会議での議論、意思決定の品質が高ければ企業活動の品質が上がる。会議のスピード感がそのままビジネスのスピードになる。もはや会議は企業活動にダイレクトに影響を与えていると言っても過言ではない。
にもかかわらず、会社は何も教えてくれない。ほとんどの人は見よう見まねで会議をやっているはずだ。企業が年中やっている研修は「管理職になる人のためのリーダーシップ研修」「部下の気持ちをくみ、やる気に火をつけるためのコーチングスキル」「成長を最大化するための目標設定方法」「経営層をうならせるプレゼンスキル」などである。これ自体を否定するつもりは全くない。素晴らしいものも多い。
しかし、経営層にプレゼンする機会より、会議や打ち合わせをする機会の方がずっと多いはずだ。幾つもの打ち合わせが積み重なってプレゼンに至るのだから、当然だ。海外の経営本やら、ビジネストレンドの本やらを読んでいる場合じゃない。自社のビジネスモデルを変える機会よりも、会議で発言する機会の方がずっと多いのだから。“時間のかけ方”が間違っている。まず足元のスキル固めをしないでどうするのだ。
約3万時間――。企業に勤めるあなたが一生涯で会議に費やす時間だ。この途方もない時間を、想像してみたことはあるだろうか? 1日10時間活動できるとして、365日休みなく働いたら約8年分になる。大事なことなので、もう一度言う。「貴重な人生の時間を、8年分も会議にささげる」ことになる。
ここで少し考えてみよう。8年もの時間を、あなたはどう過ごすことになるのだろうか? よくある会議の風景をのぞいてみよう。
お昼休み開けの会議室。小さな会議室には、テーブルを囲んで6人の男が座っている。ほとんどのメンバーが黙っている中、1人黙々としゃべっている男がいる。課長だ。書類に目を落として、まるで朗読だ。
(ああ、お昼後のこの時間にはつらい……、眠い……)。ふと横を見ると、3つ上の先輩はノートPCをにらんでいる。一見会議に集中しているように見えるが、全く別のことをやっている。
(内職か……。おれもPCを持ってくればよかった)。ふと前を見ると、別の先輩が課長に気付かれない角度で寝ている。
(う、うまい! あの技、俺も身に付けたいなぁ……)と思ったその時、「じゃあ、今日はここまでだな」と課長の声が。どうやら終わったらしい(やれやれ、やっと仕事に戻れる……)。
こんな会議に覚えはないだろうか? 3万時間、8年もの間、こんな会議を続けることになるわけだ。この絶望的な事実に、多くのビジネスマンは気付いていない。
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