転職や退職で人生の新たなステップに向かう人にとって、元の職場ともめずに気持ちよくお別れしたいのが人情というもの。ただ、実際は必ずしもうまくいかないようだ。
転職仲介を手掛けるワークポート(東京都品川区)が2018年12月に同社のサービスの利用者535人に行ったアンケートでは、62.4%が「退職時に会社からの引き留めにあった」と回答した。うち17.7%は嫌がらせやパワハラといったトラブルに発展していたという。慢性的な人手不足の折、企業側も退職者の発生に神経をとがらせているのかもしれない。
退職時のトラブルは転職者にとって不幸でしかない。だが、実は辞められる側の会社もそうした「ひどい辞めさせ方」を社員に味わわせた結果、業務などに深刻なデメリットが発生するケースがあるという。
今は人材業界で働く山本累さん(30代、仮名)は、数年前まで人事担当として勤務していたとあるサービス系の大手企業で、こうした退職のトラブルを何度か目撃した。
ある日、この会社に5年ほど勤めていたクリエイティブ職の若手社員が退職を申し出た。それまでの勤務態度は良好で、転職理由もあくまでキャリアアップという前向きなもの。会社に不満があったわけではなかった。退職日のタイミングも「職場の都合に合わせる」と申し出ており、もめる要素は無さそうだった。
しかし、この社員と仲の良かった直属の上司の態度が豹変。「辞めると分かっている人を現場に出すわけにはいかない」と今まであてがっていた仕事を振らなくなり、事務作業ばかり押し付けるようになった。最後には「辞める人にやってもらう仕事はない。給料は払うので会社に来ないでくれ」と言い渡し、そのまま若手社員は退職するはめになった。「かわいがっていた部下の退職で、この上司は逆に憎たらしくなったのかもしれない」と山本さんは振り返る。
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