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DMM亀山会長らが語り合う「10年後のパラダイムシフト」――世界の“インフラ勢力図”はどう変わるのか?覇権争いは原発からクラウドへ(1/5 ページ)

» 2019年05月17日 05時10分 公開
GLOBIS知見録

 2019年2月にG1サミット2019「時代の先を読む開拓者たち〜大放談3.0〜」が開催され、DMM.com会長の亀山敬司氏、gumi会長の國光宏尚氏、グリー会長兼社長の田中良和氏、ウォンテッドリー代表取締役CEOの仲暁子氏らが登壇した。

 インターネットやAIがあらゆるビジネスを根底から変えており、テクノロジーによる変化はすさまじい。そんな中で新たなチャンスをつかむためには、どうすればいいのか。イノベーションを取り巻く環境でどのような地殻変動が起こり得るのか。先端を行くトップランナーたちが語り合った。モデレーターを務めたのはプロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏。

phot 左からプロノバ代表取締役社長の岡島悦子氏、ウォンテッドリー代表取締役CEOの仲暁子氏、グリー会長兼社長の田中良和氏、gumi会長の國光宏尚氏、DMM.com会長の亀山敬司氏

岡島悦子氏(以下、敬称略): まず壇上の皆さまには前もって質問をさせていただきました。「先々5〜10年ぐらいのスパンでテクノロジーはこんな風に変わるから、こんな未来観があるよね」といった将来の仮説ですね。また、それに向けて今はどんな変革や地殻変動が起きていて、その流れのなかで皆さんご自身はどんなことを仕掛けているのか。まずは、そうしたお話を伺っていきたいと思います。では、仲さんから。

「アルゴられた生活」は本当に幸せなのか?

仲暁子氏(以下、敬称略): これから起きる長期的な変化については、『サピエンス全史』(河出書房新社)を書いたユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』(河出書房新社)という最新作を読んで考えたことがあります。本によると、人はもともと神至上主義だったそうです。だから、例えば「この人と結婚するべきなのかな」とか「仕事、どうしよう」とか悩んだときも、昔は「神に聞け」となっていた、と。「神様、どうしよう?」って。それで神が啓示を与えてくれるわけですね。

 そういう時代のあとは、ニーチェが「神は死んだ」と言ったように人間至上主義になり、「自分に聞け」となった。それは何かというと、答えを得るために自分の心を探索するわけです。「自分は、本当はどう思ってるんだろう」的な。それでセラピーのようなものも生まれたりしました。ただ、自分との対話というのは結構大変なんですよね。自分でも答えを持っていなかったりするので。

 最近はデータ至上主義のようなものが生まれて、アルゴリズム、平たくいうと「アプリに聞け」みたいな話になってきたというんです。確かにそれは真で、例えば最近はドライブに行くときもGoogleに道順を聞いたりします。車に搭載されているカーナビには新しい道路情報が入っていなかったりするけれど、Googleマップはいつも最新だし、かつ早く着く裏道が分かったり、混み合っている状況をリアルタイムで教えてくれたりします。これはもう自分の意思ではなくてアプリやアルゴリズムに聞いている状態ですよね。

 この前、面白いことがありました。ドライブで裏道を進んでいたら前方に私たちとまったく同じルートを選んでいる車があったんです。それで私たちはその後ろにピタッと付いて30分ほど走り続けていたんですが、それって要するに前方の彼らもまったく同じアルゴリズムに従って動いていたということですよね。運転しながら「私たち、アルゴられてない?めっちゃアルゴられてるじゃん」なんて話になって(笑)。

 日々の生活を振り返ると、そんな風にアルゴられてるシーンってたくさんあります。「食べログ」もそう。お店の推薦まではしませんが、トライ&エラーを通して自分で決めるのではなく、蓄積されたデータのなかから最適なお店を選んでいる。アプリで健康を促進したり成人病を防いだりするというお話もそうですよね。「これを食べたら血糖値が良くなる」という情報に従うのも、あえて言うなら、全てアルゴられている。「これってペットみたいだね」って。だから、果たしてペットの人生が幸せなのかといった大きな問いが、今は出てきている段階なのかなと思います。

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