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エンジニア以外も「AIの仕組み」を学ぶべき理由 機械学習とディープラーニングの違いは?よくわかる人工知能の基礎知識(1/4 ページ)

» 2019年05月09日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 本連載で解説してきたように、AI(人工知能)といってもそれが何を意味するのか、またAIをどのように実現するかの答えは1つではない。とはいえ、昨今の「このサービスは人工知能を活用しています」という説明は、機械学習もしくはディープラーニングのことを指していると考えていいだろう。

 ビジネスでのAI活用を考える上で、これらの用語の基本的な意味や、何ができるかを把握しておくことは重要だ。これは開発に関わるエンジニアだけでなく、経営者や現場担当者にも当てはまる。そこで今回は、いまのAIブームをけん引する2つのキーワードについてあらためて解説してみたい。

連載:よくわかる人工知能の基礎知識

いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。

(編集:ITmedia村上)

機械学習とは? 教師あり学習、教師なし学習、強化学習

 前回も説明したが、機械学習(Machine Learning)という研究分野が定義されたのは1959年で、60年前から存在している領域なのが分かる。

 定義したのはIBMのエンジニアだった、アーサー・サミュエルという人物である。彼は「チェッカー」というボードゲームをプレイするプログラムの開発に取り組んでいた。

 このようなゲームにおいて、「次にどんな手を打つべきか」をコンピュータに考えさせる場合、さまざまな方法が考えられる。例えば、あらゆる状況を事前に想定して「Aという状況であれば攻撃、Bであれば防御」というルールを設定する方法などだ。

機械自らが学習する

 しかしサミュエルが取った手法は、コンピュータに自分自身を相手にして何千回、何万回とチェッカーをプレイさせ、その膨大な対局データの中から「チェッカーボード上の状況がどのようなパターンだと勝ちになる/負けになる傾向があるか」を把握させるというものだった。機械自身に「学習」させたわけである。

 ちなみに、サミュエル自身はチェッカーがあまりうまくなかったそうだ。だからこそ彼は、人間(つまり自分)が勝ちパターンを設定するのではなく、機械に勝ちパターンを発見させる仕組みにしたのかもしれない。いずれにせよ、彼の狙いはうまくいき、1961年にはサミュエルどころか米国で第4位のチェッカープレイヤーを倒すことに成功した。

 サミュエルはこの機械学習を、「コンピュータが明示的にプログラムされていなくても学習する能力を持つようになることを研究する分野」(Field of study that gives computers the ability to learn without being explicitly programmed)と定義した。

 この定義に従った場合、コンピュータが事前に教えられていないことを何らかの形で学習すれば、それは全て機械学習ということになる。現在の機械学習は、「コンピュータに大量のデータを与えて試行錯誤させ、その中にあるパターンを見いだす仕組み」を指すことが多い。

 とはいえ「学習」というのも曖昧な言葉だ。機械学習の領域は、学習の際に機械へどのようにデータを与えるかによって、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに大別できる。

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