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「ゲームではなく、リアルな金融取引を体験して」――Tポイント投資で「本物の株」が買える理由(1/2 ページ)

» 2019年04月10日 15時41分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 CCCマーケティングとSBI証券が共同で設立したSBIネオモバイル証券(東京都港区)は4月10日、「Tポイント」を使ってスマートフォン上で国内株式を購入できるサービス「ネオモバ」をスタートした。投資や資産運用への関心が薄い20代がターゲットで、1株単位で売買できる点が特徴。早い段階で50万口座の開設を目指すほか、1年後までに月間1億ポイントの利用を目標に掲げる。

 昨今のビジネス界では、投資信託の基準価額などに応じてポイントが増減する“投資の疑似体験”を提供する事業者が増えているが、ネオモバはTポイントの運用には対応せず、同ポイントを使った株式の売買に特化している。

 株式投資を始めるハードルを下げて“リアルな取引”に触れてもらうことで若者の投資への関心を喚起し、ユーザーになってもらう狙いがある。

photo 「Tポイント」を使ってスマートフォン上で国内株式を購入できるサービス「ネオモバ」がスタート

株式の購入に「Tポイント」が使える

 ネオモバは、専用のWebサイトにアクセスして口座開設の手続きを行うと、登録した住所にアカウント情報が郵送され、それを入力すると取引を始められる仕組みだ。画面上では、SBI証券がおすすめする初心者向け銘柄を閲覧・購入することも可能。当初はWebブラウザのみで展開し、スマホアプリは追ってリリースする予定だ。

 株式を購入する際は、企業を検索し、使いたいTポイント(1ポイント=1円)の額を入力後、購入ボタンを押すと取引が完了。Tポイントと現金を組み合わせて支払うことや、現金のみで支払うこともできる。

 Tポイント利用時は、仕組み上は「ユーザーのTポイントをSBIネオモバイル証券が買い上げ、現金化したものを取引で使う」という流れになる。このため株式の売却時は、Tポイントではなく現金で売却代金が付与される。

photo 「ネオモバ」の特徴

ゲームではなく、実際の金融取引を体験して

 ポイントを使った投資サービスは、NTTドコモの「dポイント投資」、ロイヤリティ マーケティングの「Pontaポイント運用」などがある。前者は、投資信託の基準価額に応じてユーザーが保有する「dポイント」が増減する。後者は、実在企業の株式に対して「Pontaポイント」を疑似投資でき、株価の変動に応じてポイント数が変動する仕組みだ。

 これらは「投資初心者向け」というコンセプトはネオモバと同じだが、金融商品を提供していない点で異なる。方針の違いについて、SBIネオモバイル証券の小川裕之社長は「ポイントの運用だけでは“ゲーム”に近く、実際の金融取引を経験したことはならない。ネオモバには、『若年層に株や経済に興味を持ってもらいたい』という社会的な意義がある」と説明する。

photo NTTドコモの「dポイント投資」公式Webサイト

 SBI証券の高村正人社長も「これまで当社は若者向けにNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)に対応した金融商品を展開してきた。その結果、投資に対して明確な目的意識がある若年層にはリーチできたが、それが定まっていない層にはリーチできなかった。後者を獲得するため、何らかのきっかけを提供したいと考えた」と背景を明かす。

 他社のポイント投資・運用サービスは、ポイントの認知度向上や会員獲得が目的だが、ネオモバはSBI証券がこれまでリーチできなかった「株式投資への関心が薄い若者」を獲得し、真剣に投資に取り組んでもらうための手段としてTポイントの力を借りている――というわけだ。

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