この5年間でNANDフラッシュメモリはストレージ分野に変革をもたらした。同じように、「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)と「ストレージクラスメモリ」(SCM)は、従来のストレージ分野を一変させる可能性がある。
フラッシュ技術は5年前、ストレージ市場に不可逆的な変革をもたらした。その結果、今日では「フラッシュファースト」タイプのストレージシステムが新たな標準となっている。NANDフラッシュ技術がこの数年間でもたらした変革と同じように、今後5年間で「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)と呼ばれる新しい共有ストレージプロトコルと、やがて登場する「ストレージクラスメモリ」(SCM)の組み合わせは、従来のストレージ分野において破壊的な技術となるのだろうか。
NANDベースのSSDが初めて市場に登場した時点では、データへのアクセスにはSCSIなどの伝統的なブロックプロトコル(データをブロック単位で扱う)を使用し、SSDはSATAやSASなどのバス型アーキテクチャ(1対nの接続構成)を通じてストレージシステムのコントローラーとサーバに物理的に接続していた。また、主にストレージの高速化を目的としたサーバ側のキャッシュには、ローカルに接続するPCIベースのアドイン(追加)カードを使うのが一般的だった。
NANDフラッシュの進化に伴い、SCSIプロトコル自体がフラッシュストレージのパフォーマンスに対する制約要因になり始めた。このため、業界は「Non-Volatile Memory Express」(NVMe)という新しいブロックプロトコルを開発した。これは、HDDで想定していたよりもはるかに高い並列度でのデータアクセスに容易に対応できるなど、非揮発性メモリのパフォーマンス特性を利用した技術だ。NVMeの最初のターゲットはPCIeバスインタフェースだ。これはSCSIのパフォーマンスボトルネックを解消するのが狙いだ。
最近、「3D XPoint」をはじめとする新タイプの不揮発性メモリが登場した。3D XPointは従来の「3D NAND」フラッシュよりもはるかに高速に動作し、DRAMに迫る速度を実現する。NANDメモリがページレベルでアドレスを指定するのに対し、SCMと呼ばれる3D XPointはバイトレベルでアドレスを指定できる。SCMはNANDよりも1000倍高速で、1000倍の耐久性があるが、価格はNANDよりも高く、その価格差は初期のSSDとHDDの価格差に相当する。またSCMの利点を生かすには、NVMeプロトコルでアクセスすることが必須条件だ。
ファイバーチャネル(FC)とiSCSIがSCSIプロトコルをファブリックに拡張したように、NVMeプロトコルも同様のアプローチでファブリックに拡張されている。NVMe-oFの概念図を下に示す。
NVMe-oFはFC、TCPあるいはリモートDMA(Remote Direct-Memory Access)ベースのネットワーク上で動作し、特定のトランスポートに依存しない設計になっている。NVMeに対応したアプリケーションをファブリック(ネットワークスイッチ)で運用しても、レイテンシ(通信遅延)に与える影響は限定的だと思われる。NVMe-oFは比較的新しい技術であるため、Windowsや各種Linux系OSが標準でサポートするまでには、しばらく時間がかかりそうだ。
NVMe-oFはストレージアーキテクチャに対してどのような意味を持つのだろうか。SCMや次世代のNANDフラッシュの性能をフルに引き出すには、NVMe-oFの登場に合わせて共有ストレージアーキテクチャを変更する必要がある。ほとんどのオールフラッシュストレージシステム(AFA)のレイテンシは1ミリ秒以下で、最新のAFAの多くは500マイクロ秒以下のレイテンシだ。NVMe-oFを使用したSCMベースのアレイは、もう1桁少ない50マイクロ秒に迫るレイテンシを実現する可能性がある。
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