「NVMe-oF」と「SCM」が出会うとき、ストレージ業界に破壊的革新が起こる熱気に包まれるストレージ業界

この5年間でNANDフラッシュメモリはストレージ分野に変革をもたらした。同じように、「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)と「ストレージクラスメモリ」(SCM)は、従来のストレージ分野を一変させる可能性がある。

2018年01月23日 05時00分 公開
[Jeff KatoTechTarget]
画像 より高速なストレージの実現へ

 フラッシュ技術は5年前、ストレージ市場に不可逆的な変革をもたらした。その結果、今日では「フラッシュファースト」タイプのストレージシステムが新たな標準となっている。NANDフラッシュ技術がこの数年間でもたらした変革と同じように、今後5年間で「NVMe over Fabrics」(NVMe-oF)と呼ばれる新しい共有ストレージプロトコルと、やがて登場する「ストレージクラスメモリ」(SCM)の組み合わせは、従来のストレージ分野において破壊的な技術となるのだろうか。

 NANDベースのSSDが初めて市場に登場した時点では、データへのアクセスにはSCSIなどの伝統的なブロックプロトコル(データをブロック単位で扱う)を使用し、SSDはSATAやSASなどのバス型アーキテクチャ(1対nの接続構成)を通じてストレージシステムのコントローラーとサーバに物理的に接続していた。また、主にストレージの高速化を目的としたサーバ側のキャッシュには、ローカルに接続するPCIベースのアドイン(追加)カードを使うのが一般的だった。

 NANDフラッシュの進化に伴い、SCSIプロトコル自体がフラッシュストレージのパフォーマンスに対する制約要因になり始めた。このため、業界は「Non-Volatile Memory Express」(NVMe)という新しいブロックプロトコルを開発した。これは、HDDで想定していたよりもはるかに高い並列度でのデータアクセスに容易に対応できるなど、非揮発性メモリのパフォーマンス特性を利用した技術だ。NVMeの最初のターゲットはPCIeバスインタフェースだ。これはSCSIのパフォーマンスボトルネックを解消するのが狙いだ。

 最近、「3D XPoint」をはじめとする新タイプの不揮発性メモリが登場した。3D XPointは従来の「3D NAND」フラッシュよりもはるかに高速に動作し、DRAMに迫る速度を実現する。NANDメモリがページレベルでアドレスを指定するのに対し、SCMと呼ばれる3D XPointはバイトレベルでアドレスを指定できる。SCMはNANDよりも1000倍高速で、1000倍の耐久性があるが、価格はNANDよりも高く、その価格差は初期のSSDとHDDの価格差に相当する。またSCMの利点を生かすには、NVMeプロトコルでアクセスすることが必須条件だ。

 ファイバーチャネル(FC)とiSCSIがSCSIプロトコルをファブリックに拡張したように、NVMeプロトコルも同様のアプローチでファブリックに拡張されている。NVMe-oFの概念図を下に示す。

画像 NVMe-oFの概念図

 NVMe-oFはFC、TCPあるいはリモートDMA(Remote Direct-Memory Access)ベースのネットワーク上で動作し、特定のトランスポートに依存しない設計になっている。NVMeに対応したアプリケーションをファブリック(ネットワークスイッチ)で運用しても、レイテンシ(通信遅延)に与える影響は限定的だと思われる。NVMe-oFは比較的新しい技術であるため、Windowsや各種Linux系OSが標準でサポートするまでには、しばらく時間がかかりそうだ。

NVMe-oFの重要性

 NVMe-oFはストレージアーキテクチャに対してどのような意味を持つのだろうか。SCMや次世代のNANDフラッシュの性能をフルに引き出すには、NVMe-oFの登場に合わせて共有ストレージアーキテクチャを変更する必要がある。ほとんどのオールフラッシュストレージシステム(AFA)のレイテンシは1ミリ秒以下で、最新のAFAの多くは500マイクロ秒以下のレイテンシだ。NVMe-oFを使用したSCMベースのアレイは、もう1桁少ない50マイクロ秒に迫るレイテンシを実現する可能性がある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

事例 株式会社AIT

スケーラブルで高速・確実なデータアクセスを実現、某研究所のHPSS導入事例

データ生成デバイスの進化・多様化により、保存すべきデータ容量は急増した。その管理においては、コストとパフォーマンスのバランスが課題となっている。解決策の1つとして注目される「HPSS」の効果について、導入事例を紹介したい。

事例 株式会社AIT

データ量の急増でインフラ強化が急務に、JA大阪電算の事例に学ぶシステム移行術

業務のデジタル化が進み、データ量やワークロードが増大していた大阪府農協電算センター。それによりインフラの負荷が高まり、性能を向上させることが喫緊の課題になっていた。本資料では同社がどのようにインフラを移行したのか解説する。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

ハイブリッド環境の構造化データ管理、レガシーストレージからどう脱却する?

AIでは構造化データの活用が進む一方、クラウド普及に伴いデータの分散化が加速している。この状況下で課題となるのが、レガシーストレージの存在だ。本資料では、構造化データに適したストレージ戦略を紹介する。

製品資料 株式会社ネットワールド

どのタイプのストレージがニーズに合致するのか、NetApp製品ガイドで探る最適解

データ環境の急変は、企業のストレージ課題を複雑化させている。性能や拡張性、データ保護、分散環境の一元管理、コスト最適化など、自社の課題に合わせた製品・サービスをどう見つければよいのか。それに役立つ製品ガイドを紹介したい。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

AI活用で非構造化データも適切に処理、ハイブリッド環境に最適なストレージとは

構造化データ/非構造化データの両方を適切に処理する必要がある今、エンタープライズデータストレージには、より高度な要件が求められている。こうした中で注目される、単一障害点のないAI主導の分散型ストレージプラットフォームとは?

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...