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人から「職を奪わない」ためのAI連載第2回「ロボ材活用最前線――AIが変える働き方と経営」(1/2 ページ)

» 2018年10月03日 17時35分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 AIは職業にどのような影響を与えていくのか、どう使っていけばいいのか。これからの働き方を考える最新トレンドを追う連載の第2回。

AI失業問題より喫緊の課題

 AIによって失業者は増えると思いますか?――転職サービスのエン・ジャパンが、2016年8月にこんなアンケートを行っています。今から2年前になりますが、どのくらいの割合の人々が「AI失業」を予想していたと思いますか(詳しいアンケート結果はこちら)?

 答えはちょうど半分の50パーセント。2年前でも、既に2人に1人がAIによる失業を実感していたわけですね。ちなみにこの割合、ご想像の通り若い世代の方が高くなっていて、50代の40パーセントに対し30代では58パーセントと、20ポイント近く差が開いています。

photo エン・ジャパンのアンケート結果

 面白いのは、同じアンケートの3番目の質問「今のご自身の仕事は近い将来、AIに代替されてなくなってしまうと思いますか?」に対する結果です。先ほどの質問では半数の人々がAI失業を予想していましたが、自分の仕事がなくなると思うか?という質問に対して「はい」と答えたのは、全体のたった17パーセント。皆さん「AIによって仕事を失う人も出てくるだろうけど、自分の仕事に差し迫った危険はない」と感じているわけですね。

 この見通しが甘いかどうかは別にして、実際にいま、多くの職場で人員余剰よりも人手不足の方が課題として認識されています。人手不足の状況と原因については、さまざまな分析がなされていますが、今年3月に内閣府が発表した報告では、「景気の回復に伴う労働需要の高まりに対して、労働供給が完全には追いついていないため、中小企業を中心に人手不足感はバブル期並みの水準となっている」と解説されています。

 しかもご存知の通り、日本は少子高齢化社会がますます進行中で、労働力は減る一方。さらに他の諸外国でも人口は頭打ちで、中国ですら、2025年頃から労働輸入国に転じると予想されています。つまりいま移民を受け入れるべきかという議論が活発になっていますが、移民に門戸を開いたからといって、日本にやってきてくれるとは限らないわけですね。

 だからいまこそAIの出番――と言いたいところですが、いくらAIで自走自動車が実現される時代になったからといって、同じAIにオフィスの掃除をお願いすることはできません。運転もできれば料理もできる、土木作業や子供の世話まで――などという汎用ロボットが誰でも手に入るという未来は、まだ地平線にすら見えていないのです。「自分の仕事が近い将来、ロボットやAIに代替されてしまうことはない」と予想した多くの人々は、正しく未来を見据えていると言えるでしょう(残念ながら全員ではないはずですが)。

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