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キヤノン、フルサイズミラーレス一眼「EOS R」発表 従来の“制約”から開放、自由なレンズ開発可能に(1/2 ページ)

» 2018年09月05日 16時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 キヤノンは9月5日、同社初のフルサイズミラーレス一眼カメラとなる「EOS R」を発表した。新規開発の「キヤノンRFマウント」を搭載する。10月下旬に発売する。価格はオープンで、同社オンラインショップでの販売予定価格は23万7500円(税別、以下同様)。専用マウントアダプターで、キヤノンEFマウントレンズとEF-Sレンズも利用できる。

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 同社の海原昇二所長(ICB製品センター)は、「卓越した光学性能を追求した。内径54ミリのRFマウントに刷新し、ショートフランジバックとなることで、従来の制約から開放された自由なレンズ開発が可能になった」という。

 「RFマウントでは、光学系の小型化や高画質化を実現する。RFレンズを核とする新システムで、新たなステージへ向かう」(海原所長)と意気込む。

 EOS Rに搭載するCMOSイメージセンサーのサイズは約36.0×24.0ミリで、有効画素数は約3030万画素。イメージセンサーの各画素が位相差AFセンサーとなり高速な合焦を実現する「デュアルピクセルCMOS AF」を搭載した。AF速度は最速0.05秒で、フルサイズミラーレスの中では世界最速をうたう。映像処理エンジンには「DIGIC 8」を備える。

 電子ビューファインダーには0.5型約369万ピクセルの有機ELを採用。ファインダー視野率は約100%で、倍率は約0.71倍。背面モニターは3.15型のバリアングル対応液晶ディスプレイで、約210万ピクセル。

 常用ISO感度は100から4万までで、拡張で50、5万1200、10万2400まで対応する。シャッタースピードは1/8000秒から30秒まで。

 連写速度は最大約8.0コマ/秒。動体重視のコンティニュアスAFの場合、最大約5.0コマ/秒。

訂正:2018年9月7日午後5時 コンティニュアスAFの場合約3.0コマ/秒としていましたが、正しくは約5.0コマ/秒でした。おわびして訂正いたします。低速連写モードの場合は約3.0コマ/秒となります。

 記録媒体には、SD/SDHC/SDXCカードを採用。UHS-IIに対応する。

 バッテリーは「LP-E6N」と「LP-E6」を利用可能。一度の充電での撮影可能枚数は約370枚(常温時)。本体にはUSB Type-C(3.1 Gen 1)ポートを搭載し、「USB Power Adapter PD-E1」からUSB充電できる(LE-E6Nのみ)。

 本体サイズは、約135.8(幅)×98.3(高さ)×84.4(奥行き)ミリで、バッテリーとSDメモリーカードを含んだ重量は約660グラム。

動画性能も

RFマウントレンズを4本発表 F2通しの標準ズームも

 また、キヤノンRFマウントレンズとして「RF24-105mm F4 L IS USM」「RF50mm F1.2 L USM」「RF28-70mm F2 L USM」「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」の4本を発表。RF28-70mm F2 L USMは同社初のF2通しを実現した標準ズームレンズとなる。

 RF24-105mm F4 L IS USMとRF50mm F1.2 L USMの発売日は10月下旬。RF24-105mm F4 L IS USMの価格は15万5000円で、RF50mm F1.2 L USMの価格は32万5000円。

 RF28-70mm F2 L USMとRF35mm F1.8 MACRO IS STMの発売日は12月下旬。RF28-70mm F2 L USMの価格は42万円で、RF35mm F1.8 MACRO IS STMの価格は7万5000円。

 ロードマップも公開。今後、F2.8通しのLズームレンズなどを予定している。

EFマウントレンズを利用できるマウントアダプター コントロールリング付きモデルも

 マウントアダプター「EF-EOS R」シリーズも同時に発表。マウントアダプターを利用することで、従来の「キヤノンEFマウントレンズ」「EF-Sレンズ」をEOS Rへマウントできる。なお、同社のAPS-Cサイズのミラーレス一眼である「EOS M」シリーズ向けの「EF-Mレンズ」はマウントできない。

 また、EF-EOS Rの派生として、絞り値やISO感度などの設定を割り当てられるコントロールリングを搭載した「コントロールリング マウントアダプター」と、ドロップインフィルターの装着ができる「ドロップインフィルター マウントアダプター 円偏光フィルター A 付」「ドロップインフィルター マウントアダプター 可変式NDフィルター A 付」も発表した。

 マウントアダプターのみのモデルと、コントロールリング付きのモデルの発売日は10月下旬。価格はマウントアダプターのみのモデルが1万5000円。コントロールリング付きモデルが3万円。

 ドロップインフィルターモデル2種の発売日は2019年2月下旬。価格は円偏光フィルターモデルが4万5000円で、可変式NDフィルターモデルが6万円。

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「フルラインアップ戦略」一眼レフもミラーレスも続けていく

 同社の真栄田雅也代表取締役社長は、「(フルサイズミラーレスを出したが)カメラに対する戦略は変わっていない」と話す。

 「われわれのカメラ戦略は、撮影領域を広げることだと以前から発信してきた。フルサイズのミラーレス機を出したのもまさに撮影領域の拡大」(真栄田代表取締役社長)

 「従来のEFマウントやEOS M、今回のEOS Rも含めて“フルラインアップ”戦略でさまざまなシステムを今後も提供していく。その中でお客さまに選んでいただく」と、従来製品とのカニバリについて「結果的には起きるかもしれない」という考えを示した。

「宇都宮と東京で激論交わした」

 海原所長は、RFマウント開発に当たって、レンズ開発者とボディ開発者で何度も激論を交わしたと振り返る。

 「今まではミラーがあったが、この制約を外したらどうなるか。レンズ開発側としては、ショートフランジバックとなることでF2通しのズームレンズも(比較的)小型に収められる。また、光学性能向上にはマウント径の拡大も求められる。ところが、ボディ開発側からすると、マウント径を大きくするとボディの小型化に制限がかかることになる。フルサイズミラーレスで先行する他社に対して不利なのではないか、などの懸念があった」(海原所長)

 「レンズの開発拠点は宇都宮で、ボディの拠点は東京。この2拠点を何度も行き来して激論を交わした。今回は光学性能の追求が第一。ボディの小型化がレンズの足かせにはなってはいけない」(海原所長)と結論した。

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