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Microsoft はクラウドでもナンバーワンを目指す

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Microsoftがついに国内クラウドベンダー第2位となり、「2020年には、日本のナンバーワンクラウドベンダーを目指す」ことを宣言しました。

2020年には国内ナンバーワンクラウドベンダーを目指したい――、日本マイクロソフト・平野拓也社長が宣言

この記事の中に、こう紹介されています。

前年度の方針説明では、「リーディングベンダー」という表現を用いていたが、今年は「ナンバーワン」という言葉を明確に打ち出した。

そして、「今年に入ってからパブリッククラウドベンダーとして国内第2位になったこと、先行するAmazon Web Services(AWS)に比べて高い成長率を継続していることが背景にあるようだ。」と続きます。

これまでクラウドは、Amazon、Google、Salesforceなどの「新しい世代」の企業が牽引してきました。IBMやMicrosoft、Oracleのような旧世代(オンプレミスで稼いできた企業)は、過去のビジネスモデルからの転換が遅れ、クラウドへの移行に四苦八苦している印象があります。その中で、MicrosoftはやっとAmazonを射程に捉えたのです。

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実際のシェアの差は?

では、現実にAWSとAzureのシェアの差はどのくらいなのか? 上の記事には無かったので探してみると、この記事が見つかりました。

2021年度に異変? 国内クラウド市場はこれからどうなるか

2017年末の調査ですが、AWSに次ぐ第2位がAzureになっていると書いています。FaaS、PaaS、IaaSについて各社のシェアを調査しています。各ジャンルともAWSが1位なのですが、IaaSとPaaSでAzureが2位、FaaSではGoogleが2位につけています。

FaaSでの差はわずかですが、検討中のサービスではAzureは4位になっており、他社に差を付けられています。これは、FaaSがまだ立ち上がり初期の段階で、アーリーアダプターが多いからではないかと思います。新しモノ好(というか、新技術をいち早く試してみたい人)きはAmazonとかGoogleのほうを好むのではないかと思います。

しかし、IaaSとPaaSでは検討サービスでAzureが1位になっています。これは、FaaSと違って採用企業の裾野が広がり、アーリーマジョリティが採用しはじめているからではないでしょうか。一部の先進的なユーザーの導入が成功し、これまで様子を見ていた企業がクラウドの採用を始めているのでしょう。この段階では、AmazonやGoogleよりも、MicrosoftやIBMのような「信頼感のある」ベンダーを選ぶ方が安心できるという心理が働くのではないでしょうか。法人向けのパートナーが多く、体制もしっかりしているのもプラスに働いていると考えられます。そしてこの層は数も多く、その後のレイトマジョリティにうまく繋ぐことができれば、シェアは一気に高まります。

開発者向けのAWS/GCP、ユーザー向けのAzure?

つまり、AWS/GCPは新技術の取り込みも早く、とにかく試してみたい開発者向けには良いサービスですが、パートナーの数やサポート面でまだ充実していない部分があり、エンドユーザーが自ら、あるいはSIerさんを通じて利用するにはハードルが高いと言うことではないかと思います。MicrosoftやIBM、Oracleはこれまで培ってきた代理店網やサポート体制がありますから、これからクラウドがユーザー企業に浸透していく中では有利に働くのではないでしょうか。その中でも、Microsoftは明確な戦略を持って取り組み、それがうまく機能しているように感じます。IBM/Oracleももちろんクラウドに取り組んでいますが、既存事業との兼ね合いを気にしすぎるのか、いまひとつ取り組みがちぐはぐな様に思います。

Office365が牽引か?

最初の記事の中で平野社長は

昨年の会見では、日経225の8割で当社のクラウドが利用されていると報告したが、今年は92%にまで上昇している

と述べたと紹介されていますが、これは私は、ちょっとトリックがあるのではないかと思っています。Azureではなく、「当社のクラウド」と言っているのは、この中にかなりの割合でOffice365が入っているからではないでしょうか。もうOSはWindowsでなくても困らなくなっていますが、オフィススイートはMicrosoft Officeでないと困る、という企業は多いと思います。そして、そういった企業の多くがOffice365に移行しているとすると、大手企業の9割がMicrosoftの「クラウド」を使っている、といってもそれほど不思議ではありません。そしてOffice365を入れると自動的にActive Directoryがついてきて、SharePointなどのサービスも導入しやすくなるというように、手持ちのコマをうまく並べてユーザーをMicrosoftワールドに誘導しており、これが効を奏しているのではないでしょうか。

Officeのような圧倒的なキラーコンテンツを持たずに頑張っているAmazonやGoogleと比べて、多少下駄を履いている部分があるようにも感じますが、Microsoftの復活は、自社の強み、置かれたポジション、顧客との関係を突き詰めて独自のクラウド戦略を構築してきた結果なのだろうと思います。

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