NAND型フラッシュメモリの「チャージトラップ」と「フローティングゲート」の違い仕組みやメリットを比較

「チャージトラップ」方式のNAND型フラッシュメモリは、旧式の「フローティングゲート」方式と比べて何が優れているのか。現状の課題は。

2018年07月19日 05時00分 公開
[Robert SheldonTechTarget]
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 NAND型フラッシュメモリは一般的に、メモリセルにある「フローティングゲート」(浮遊ゲート)という電荷保持領域を使用して、データを格納する。ベンダーの中には耐久性と拡張性を高めようと、フローティングゲートとは別の手段で電荷を保持する「チャージトラップ」(電荷捕獲)方式のNAND型フラッシュメモリに切り替える動きもある。

 チャージトラップ方式のNAND型フラッシュメモリは、フローティングゲート方式と比べて、メモリセルの物理的な損傷や電子漏れの影響を受けにくい。一方でチャージトラップ方式には、特に信頼性に関する課題が指摘されている。

フローティングゲートのジレンマ

 フローティングゲートは、NAND型フラッシュメモリの一般的な電荷保持手段として利用されてきた。フローティングゲートは、特定の方法でメモリセルに電圧が加わると電子を蓄積する。別の方法で電圧が加わると、電子を解放する。通常はメモリセル1個につき、フローティングゲート1個を含む。

 1個のメモリセルで1bitを保持できるシングルレベルセル(SLC)のNAND型フラッシュメモリの場合、フローティングゲートに電子を蓄積すると、そのメモリセルのビット値を「0」だと見なす。そうでなければ「1」だと見なす。1個のメモリセルで保持できるデータが2bitのマルチレベルセル(MLC)や、3bitのトリプルレベルセル(TLC)のNAND型フラッシュメモリになると計算は複雑になるが、基本は変わらない。

 メモリセルの内部では、内外に電子が出入りするシリコン基板とフローティングゲートを「トンネル酸化膜」という絶縁膜で分離している。トンネル酸化膜は極めて薄いため、電圧が加わると、電子はトンネル酸化膜を通り、フローティングゲートとシリコン基板の間を移動できる。

 データの書き込み(プログラム)操作中は、電子をフローティングゲートに蓄える。消去操作中は、フローティングゲートから電子を排出する。

 NAND型フラッシュメモリでは、データの書き込み/消去プロセスである「P/Eサイクル」を繰り返すたびに、トンネル酸化膜がわずかに損傷する。ある程度のP/Eサイクルを繰り返すと、トンネル酸化膜が劣化して電子を保持できなくなり、電子がフローティングゲートから漏れ出して、メモリセルは使用不能になる。

 メモリセルのサイズが小さくなり、各メモリセルに詰め込むビット数が増えるにつれ、メモリセルが物理的に損傷する可能性は高くなる。一部のメモリセルに読み書きが集中しないようにする「ウェアレベリング」などのテクノロジーによって、フラッシュストレージ全体の寿命を延ばすことはできる。ただし各メモリセルは、いずれ機能しなくなる。

救いとなるチャージトラップ

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